2017 年 53 巻 4 号 p. 938-943
症例は12歳女児.突然の上腹部痛と嘔気を主訴に近医を受診し,腹部超音波で膵尾部に腫瘤を認め,精査目的に紹介となった.血液検査は異常認めず,腫瘍マーカー上昇も認めなかった.造影CTで膵尾部に径40 mmの被膜を有する境界明瞭な腫瘤性病変を認めた.以上より,膵solid-pseudopapillary neoplasm(SPN)と診断し,腹腔鏡下脾温存膵体尾部切除術を施行した.術後膵液瘻を認めたが重症化することなく保存的治療で軽快し退院となった.術後1年が経過し,再発を認めていない.SPNは低悪性度腫瘍であり,低侵襲で根治性にも優れた本術式は,小児においても有用であった.また脾動静脈の処理などの微細な操作が細径鉗子でも十分に可能であり,腫瘍を臍から摘出することでさらに整容性の向上を図ることができると考えられた.