2017 年 53 巻 6 号 p. 1139-1143
【目的】Hirschsprung病類縁疾患には,重篤なイレウス症状を呈するものから頑固な便秘を臨床症状とするものまでその重症度は多彩である.なかでも広範囲型Hirschsprung病類縁疾患は予後不良で,小腸移植の適応となる疾患群であり,慢性的な腸閉塞症状を継続または反復する疾患である.病変部は全腸管に及んでいることが多く,明確な閉塞部位がないため,腸管減圧のための腸瘻をどこに造設するべきなのかは議論の的である.今回,当疾患において腸管減圧可能な腸瘻造設部位について後方視的検討を行なったので報告する.
【方法】1980年以降,当科にて治療を行なった広範囲型Hirschsprung病類縁疾患11例を対象とした.内訳は慢性特発性偽性腸閉塞(chronic idiopathic intestinal pseudo-obstruction;CIIP)4例,腸管神経節細胞僅少症(isolated hypogaglionosis;HP)4例,巨大膀胱短小結腸腸管蠕動不全症(megacystis-microcolon-intestinal hypoperistalsis syndrome;MMIHS)3例であり,のべ22回の減圧手術を行なった.機能的腸管長・身長比(IH比)をパラメータとして,術後腸管減圧可能であった群と不十分であった群を比較検討した.
【結果】術後腸管減圧可能であった手術群と不十分であった手術群のIH比の中央値は,CIIP:1.63 vs 3.65,HP:0.8 vs 2.2,MMIHS:0.63 vs 2.78であり,ROC解析のカットオフ値はCIIP:2.75(p=0.11),HP:0.8(P=0.002),MMIHS:0.7(P=0.02)であった.
【結論】広範囲型Hirschsprung病類縁疾患は稀少疾患であり,統計学的根拠を示すことは難しいが,当研究にて腸瘻の位置としてHPでは十二指腸から身長×0.8 cmの上部空腸に,MMIHSは身長×0.7 cmの上部空腸に立てることが有効である可能性が示唆された.