2017 年 53 巻 6 号 p. 1166-1169
膿瘍形成性虫垂炎において,膿瘍が回腸へ穿通した稀な1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.症例は9歳の男児で,発熱と腹痛を繰り返し,症状出現より5日目に当科を受診した.膿瘍形成性虫垂炎の診断でinterval appendectomyの方針とし,抗菌剤投与を行った.しかし,症状の増悪を認め,入院3日目に緊急手術を施行した.S状結腸右側に虫垂と連続する膿瘍を認め,この膿瘍は回腸へ穿通していた.虫垂切除,回腸部分切除・端々吻合術及び腹腔内ドレナージを行い,術後経過は良好であった.虫垂炎において,虫垂が腸管や膀胱と内瘻を形成した報告は散見されるが,膿瘍が他臓器に穿通することは稀である.虫垂炎による膿瘍の回腸への穿通は本邦報告例を検索する限り,本症例のみであった.治療開始までに長期間を要した膿瘍形成性虫垂炎の加療においては,他臓器との穿通の可能性についても留意しておく必要があると思われた.