2018 年 54 巻 4 号 p. 956-960
症例は11歳男児.持続する右陰囊腫大があり,前医で陰囊水腫を疑われ当科を受診.水腫ではなく,右精巣腫瘤(45×25×23 mm,弾性硬)を認めた.超音波検査で右精巣実質内に小囊胞の塊状集簇を,MRIで同部位に多房性囊胞性病変を認め,さらに右腎無形成と左腎の代償性腫大も認めた.部位や形態,特徴的な尿路奇形からcystic dysplasia of the rete testis(以下CDRT)を疑い,腫瘤核出術を行った.摘出標本の病理組織所見でも,CDRTに一致する所見であった.CDRTの定義は明確になっておらず,報告例も少ない.精巣網由来の病変のため術後精子輸送能障害が懸念されるが,本例では腫瘤核出術を選択したことで,ホルモン産生能の温存は期待できると考えられた.術後2年半経過した現時点で再発を認めていないが,再発に留意したフォローが必要と考える.