日本小児外科学会雑誌
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原著
巨大囊胞性胎便性腹膜炎に対する多期的手術症例の検討
三藤 賢志上原 秀一郎米田 光宏中岡 達雄東尾 篤史塚崎 雪乃西本 聡美中村 哲郎
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2018 年 54 巻 5 号 p. 1065-1070

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抄録

【目的】巨大囊胞性胎便性腹膜炎(giant cystic meconium peritonitis: GCMP)は,出生直後より腹腔内の炎症性変化が強く,しばしば治療に難渋する.我々は多期的手術を基本方針としているが,今回,その妥当性を検証するために当院での症例を後方視的に検討した.

【方法】2000年から2015年に当院で加療されたGCMP 6例を対象とし,初回手術術式により腸瘻群とドレナージ群の2群に分け,その特徴を比較した.

【結果】腸瘻群4例,ドレナージ群2例で,腸瘻群の1例を除いて出生前診断は胎便性腹膜炎であった.在胎週数,出生体重中央値はそれぞれ腸瘻群35.5週(34~38週),2,647 g(2,526~2,777 g),ドレナージ群34週(31, 37週),2,551 g(2,397, 2,705 g)であった.ドレナージ群で手術時間は短く,出血量は少なかった.一方,術後栄養開始時期は腸瘻群で早い傾向であった.腸瘻群では全例2期的に手術され,ドレナージ群では1例が2期的,1例は3期的に手術された.両群ともに初回手術から最終手術までの期間は30日以上であった.合併症は腸瘻群で再手術を要した腹壁瘢痕ヘルニア1例,保存的に改善した吻合部狭窄1例で,ドレナージ群で保存的に改善した肝機能障害2例であった.全例生存退院し,観察期間中央値は37.5か月(16~186か月)で,21トリソミー合併の1例を除いて,精神身体発育は良好であった.

【結論】GCMPに対し,初回に腸瘻造設またはドレナージを行い,30日以降に根治手術を行う多期的手術で良好な結果を得た.GCMPにおける多期的手術は妥当と考えられた.

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