日本小児外科学会雑誌
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原著
先天性気管狭窄症非手術症例11例の検討
谷本 光隆尾藤 祐子大片 祐一西島 栄治前田 貢作
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2019 年 55 巻 2 号 p. 248-252

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抄録

【目的】先天性気管狭窄症(CTS: congenital tracheal stenosis)は,重篤な呼吸障害を来し,外科的介入を必要とする症例が多い一方,保存的に経過観察が可能な症例が存在する.当院で経験した先天性気管狭窄症の非手術症例の病態について検討した.

【方法】対象は2000年から2009年までに当院を受診したCTS 66例のうち,4年以上の経過観察を行った,上気道疾患合併症例を除いたCTS非手術症例11例で,性別,発症時年齢,病型,臨床経過,観察期間,CT上の気管内腔の最狭窄部径・狭窄率(正常気管径-最狭窄部径/正常気管径)及び変化について後方視的に検討した.

【結果】男児5例,女児6例で,無症状の2例を除く9例の発症年齢は0~15(中央値2)か月で,症状は呼吸負荷時のみ喘鳴を認める症例が5例,安静時より喘鳴を認める症例が4例であった.58~185(平均99)か月の経過観察期間で,臨床症状は無症状6例,呼吸負荷時の喘鳴4例,安静時喘鳴1例と軽快傾向にあった.この間,3例に挿管呼吸管理を要した.CT肺野条件による最狭窄部径は1.9~4.5(平均2.8)mm,狭窄率は21~60(平均46)%であった.複数回CTを撮像した6例(観察期間13~85か月,平均43か月)で,最狭窄部径は0.64 mm/年(0.42~0.76)と増加を認めたが,狭窄率は42%から35%と有意な変化を認めなかった.

【結論】狭窄の比較的軽微な症例は,成長に伴い症状の改善や気管径の増加を期待できる.慎重な適応の判断,経過観察中の十分な注意が必要だが,症状の軽微な症例に対しては保存的加療も考慮すべきである.

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