日本小児外科学会雑誌
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症例報告
小児大量胸水に対する胸腔腹腔シャントの使用経験
加藤 怜子川嶋 寛石丸 哲也柿原 知林 健太郎小俣 佳奈子青山 統寛
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2019 年 55 巻 4 号 p. 881-885

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抄録

小児に対する胸腔腹腔シャントは国内外で使用の報告例が散見されるが,デバイスが成人用規格しか流通しておらず,その安全性や手術手技は確立されていない.今回我々は幼児期の胸水貯留に対して胸腔腹腔シャントを造設する経験を得た.症例は4歳の女児で,新生児期に乳糜胸水を認めるも保存加療で軽快していたが,その後再発を認めず経過した.4歳で呼吸困難が出現し特発性大量胸水と診断された.胸水の性状は漏出性胸水であり利尿薬や頻回の胸腔ドレナージなどの保存加療に反応しなかった.画像検査ではリンパ管機能は正常であると判断し胸腔腹腔シャントを造設した.術後,胸腔ドレナージは不要となり,呼吸困難の再燃なく自宅への退院が可能となった.胸腔腹腔シャントは,その適応を慎重に選択すべきではあるが比較的安全な手技で造設が可能であり,特に難治性の漏出性胸水には良い適応である.本症例の経験をふまえ文献的考察を加えて報告する.

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