日本小児外科学会雑誌
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原著
先天性食道狭窄症における手術適応決定に関する因子の検討
三藤 賢志春本 研高松 由布子寺村 一裕
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2020 年 56 巻 1 号 p. 59-65

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抄録

【目的】先天性食道狭窄症(以下,CES)は稀な疾患であり,治療のための明確な指針はない.今回,当院で経験した症例を後方視的に検討し,その手術適応を考察した.

【方法】2007年1月から2017年12月までに当院で加療したCES 6例を対象とし,バルーン拡張のみで改善した群(拡張群)3例,手術で改善した群(手術群)3例の2群に分け後方視的に検討した.

【結果】合併疾患は超低出生体重児で食道閉鎖症を合併した1例,21トリソミー1例,鎖肛1例で,初発症状は嘔吐3例,呼吸障害2例,偶発的発見1例であった.発症時月齢は0~28か月(中央値4か月)で新生児期発症は2例であった.診断は全例食道造影で行われ,病変は中部1例,下部4例,中部と下部の2か所が1例であった.拡張術は全例行われており,その際のバルーン最大径と最小径の比率(wedge ratio 以下,WR)は拡張群0.82~1(0.95),手術群0.52~0.78(0.68)であった.拡張直後の造影で狭窄増悪を認めたのは拡張群1例,手術群3例で拡張群の1例は拡張回数が最多で,難治症例であった.拡張群でのバルーン拡張は4~10回(中央値6回),手術群での術前バルーン拡張は5~7回(6回)であった.術式は全例,狭窄部環状切除端々吻合が行われ,病理組織診断は全例気管原基迷入型狭窄であった.追跡期間は14~115か月(39か月)で両群ともに食事摂取可能となり経過良好であった.

【結論】CESにおいてWRとバルーン拡張術直後の狭窄増悪が拡張術の効果予測と手術適応の決定に有用である可能性が示唆された.

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