日本小児外科学会雑誌
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56 巻, 1 号
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おしらせ
追悼文
学術集会記録
原著
  • 坂本 早季, 橋詰 直樹, 深堀 優, 石井 信二, 七種 伸行, 東舘 成希, 吉田 索, 升井 大介, 田中 芳明, 八木 実
    2020 年 56 巻 1 号 p. 53-58
    発行日: 2020/02/20
    公開日: 2020/02/20
    ジャーナル フリー

    【目的】小児外傷性脾損傷(以下:本症)に対する当科の治療成績を検討する.

    【方法】16年間に当院に搬入された15歳以下の本症13例(男児8例,女児5例,年齢中央値9歳(3~14歳)の臨床的検討を行った.

    【結果】重症度は日本外傷学会分類2008からIb 1例,IIIa 4例,IIIb 8例(うち+HV 1例)であった.開腹手術例は3例(IIIb),血管造影施行例は6例(IIIa 4例,IIIb 7例),そのうち経カテーテル的動脈塞栓術施行例は4例(血管外漏出3例,仮性動脈瘤1例)であり4例とも止血を確認し,保存的治療可能であった.

    【結論】重症度の高い本症に対して経カテーテル的動脈塞栓術を施行することで安定した非手術管理を行うことが可能であった.しかし経カテーテル的動脈塞栓術が必要でなかった例もあると考えられ治療選択の更なる検討が必要である.

  • 三藤 賢志, 春本 研, 高松 由布子, 寺村 一裕
    2020 年 56 巻 1 号 p. 59-65
    発行日: 2020/02/20
    公開日: 2020/02/20
    ジャーナル フリー

    【目的】先天性食道狭窄症(以下,CES)は稀な疾患であり,治療のための明確な指針はない.今回,当院で経験した症例を後方視的に検討し,その手術適応を考察した.

    【方法】2007年1月から2017年12月までに当院で加療したCES 6例を対象とし,バルーン拡張のみで改善した群(拡張群)3例,手術で改善した群(手術群)3例の2群に分け後方視的に検討した.

    【結果】合併疾患は超低出生体重児で食道閉鎖症を合併した1例,21トリソミー1例,鎖肛1例で,初発症状は嘔吐3例,呼吸障害2例,偶発的発見1例であった.発症時月齢は0~28か月(中央値4か月)で新生児期発症は2例であった.診断は全例食道造影で行われ,病変は中部1例,下部4例,中部と下部の2か所が1例であった.拡張術は全例行われており,その際のバルーン最大径と最小径の比率(wedge ratio 以下,WR)は拡張群0.82~1(0.95),手術群0.52~0.78(0.68)であった.拡張直後の造影で狭窄増悪を認めたのは拡張群1例,手術群3例で拡張群の1例は拡張回数が最多で,難治症例であった.拡張群でのバルーン拡張は4~10回(中央値6回),手術群での術前バルーン拡張は5~7回(6回)であった.術式は全例,狭窄部環状切除端々吻合が行われ,病理組織診断は全例気管原基迷入型狭窄であった.追跡期間は14~115か月(39か月)で両群ともに食事摂取可能となり経過良好であった.

    【結論】CESにおいてWRとバルーン拡張術直後の狭窄増悪が拡張術の効果予測と手術適応の決定に有用である可能性が示唆された.

症例報告
  • 根本 悠里, 増本 幸二, 新開 統子, 田中 尚, 相吉 翼, 石川 未来, 佐々木 理人, 千葉 史子, 小野 健太郎
    2020 年 56 巻 1 号 p. 66-70
    発行日: 2020/02/20
    公開日: 2020/02/20
    ジャーナル フリー

    症例は8歳女児.6歳時にシトルリン血症に対して肝左葉グラフトによる生体部分肝移植を施行された.移植後2年目に,腹痛および嘔吐で癒着性腸閉塞を発症した.腹部単純X線で右横隔膜下に拡張した腸管を認め,イレウス管を挿入し経過観察した.第8病日に症状改善し,イレウス管を抜去し食事を開始すると症状が再燃した.保存的治療による改善がなく手術適応となった.開腹時,創直下腹壁と肝切離部辺縁に結腸の強い癒着を認めた.さらに肝切離面に小腸の癒着と索状物による小腸の狭窄を認めた.結腸の癒着剥離を行い,狭窄部を含め小腸を部分切除後,端々吻合した.術中の肝血管や胆管合併症はなかった.術後経過は順調で,術後14日目に退院した.小児部分肝移植後の消化管合併症で,癒着性腸閉塞の報告は比較的少なく,本症例と同様の肝切離面による癒着から腸閉塞を来した報告は認めなかった.癒着性腸閉塞による再開腹術を避けるために,生体部分肝移植時の肝切離面による腸管との癒着防止の工夫も重要と考えられた.

  • 山﨑 信人, 緒方 秀昭, 須磨崎 真, 高地 良介, 斎藤 芙美, 黒岩 実, 酒井 正人, 船橋 公彦, 栃木 直文, 渋谷 和俊
    2020 年 56 巻 1 号 p. 71-75
    発行日: 2020/02/20
    公開日: 2020/02/20
    ジャーナル フリー

    葉状腫瘍の発生頻度は全乳腺腫瘍の1%未満で,40歳代に好発し小児期での報告例は少ない.今回,我々の経験した小児の両側葉状腫瘍再発症例を文献的考察加え報告する.症例は14歳女児.家族歴なし.既往歴は5歳時に扁桃腺切除,8歳時に肝過誤腫切除歴がある.右乳房腫瘤を主訴に近医受診し当院紹介となった.超音波検査では右乳房上外側に径約4 cm,境界明瞭で分葉状の腫瘤を認め,多結節性かつ内部エコーは一部不均一で葉状腫瘍を否定できず切除方針となった.病理診断は良性葉状腫瘍で切除断端は陰性であった.術後1年4か月で両側乳房に多発腫瘤が出現し再摘出を行った.病理診断は初回手術時と同様の良性葉状腫瘍であった.その後多発腫瘤が出現したため,増大傾向の腫瘤を摘出する方針とし,現在まで計4回の摘出術を行っている.小児では乳腺温存が必要であるため腫瘤を切除せず慎重に経過観察し,径3 cm以上に増大したものを切除する方針とし慎重に経過観察している.

  • 福井 慶介, 齋藤 傑, 森川 康英, 渕本 康史
    2020 年 56 巻 1 号 p. 76-81
    発行日: 2020/02/20
    公開日: 2020/02/20
    ジャーナル フリー

    症例は,染色体異常に伴う重症心身障害のため施設入所中の21歳,男性.当科にて嚥下障害に対して喉頭気管分離術を施行した.術後経過は概ね良好であったが,退院翌日に腹痛を訴え,血清Amy高値,腹部CTでの腸管拡張像を認めたため再入院となった.病歴,各種検査結果からSMA症候群に起因する急性膵炎と診断した.SMA症候群による急性膵炎を来すことは極めて稀であり外科的治療が必要な場合が多いが,厳重な体位管理によるドレナージが奏功し軽快退院となった.重症心身障害児は生後早期から発症がみられることが多く,移行期を過ぎて成人になっても小児外科が関わることが少なくない.重症心身障害を背景とする術後患者で,胆汁性嘔吐や腹痛を訴える場合にはSMA症候群やSMA症候群による急性膵炎も念頭において鑑別診断,治療を行うべきである.

  • 荒 桃子, 上村 哲郎
    2020 年 56 巻 1 号 p. 82-85
    発行日: 2020/02/20
    公開日: 2020/02/20
    ジャーナル フリー

    症例は日齢17の男児で,体重減少を伴う頻回な嘔吐を認め,肥厚性幽門狭窄症の診断で入院した.入院当日夜間より胃管排液が胆汁性へと変化したが,画像検査では腸回転異常症の所見は認めなかった.アトロピン療法により,一時的に哺乳可能となったものの,哺乳量増加に伴い胆汁性嘔吐が再出現した.上部消化管造影では幽門のstring signと,十二指腸球部で停滞した造影剤の胃への逆流を認め,乳頭部以遠の十二指腸の通過障害を合併した肥厚性幽門狭窄症と診断した.開腹手術において,横行結腸後葉側から胆囊底部右尾側後腹膜へ続く膜様の異常靭帯による十二指腸下行脚の外因性の圧迫所見を認め,これを切離した後にラムステッド手術を加えた.術中消化管造影により十二指腸の通過が良好となったことを確認でき,術後経過は良好であった.本症例は異常靭帯による外因性十二指腸狭窄を合併したために,胆汁性嘔吐という非典型的な症状を呈した肥厚性幽門狭窄症であった.

  • 星野 真由美, 渡邉 揚介, 後藤 博志, 小野 賀功, 加藤 廉, 上瀧 悠介, 九鬼 直人, 上原 秀一郎, 越永 従道
    2020 年 56 巻 1 号 p. 86-90
    発行日: 2020/02/20
    公開日: 2020/02/20
    ジャーナル フリー

    症例は日齢0女児.他院にて妊娠初期に妊娠が確認されたが,その後未受診となっていた.在胎36週6日に自宅分娩となったため,母児ともに救急搬送となった.児は腹壁破裂を認め,日齢1にSilo形成を行い,脱出臓器を徐々に腹腔内に還納後,日齢10に腹壁欠損部への臍帯充填によるsutureless腹壁閉鎖法を施行した.術後敗血症などの重篤な合併症はなく日齢78に退院となった.未受診妊婦から出生した児は予後不良とされるが,腹壁破裂のように合併奇形が少なく,生存率が高い疾患の場合は,出生後の処置が適切であれば,自宅分娩であっても救命可能であると思われた.未受診妊婦の出産は非常にハイリスクであるが,腹壁破裂の母体の特徴から未受診で妊娠経過を過ごし,出生前診断されないまま,自宅分娩や飛び込み分娩にて出生することは今後も起こりうる事象であり,妊婦健診および胎児診断の重要性については女性のみならず,男性へも教育するシステムの充実が急務である.

  • 吉村 萌, 古村 眞, 花田 学, 尾花 和子, 宮國 憲昭, 筧 紘子, 國方 徹也, 荒尾 正人, 秋岡 祐子, 大澤 威一郎
    2020 年 56 巻 1 号 p. 91-94
    発行日: 2020/02/20
    公開日: 2020/02/20
    ジャーナル フリー

    我々は,極低出生体重児に腹部造影CT検査を施行し,複雑深在性脾損傷(IIIb)を診断し,保存的治療に成功した症例を経験した.症例は,日齢1男児.在胎27週5日で既往帝王切開のため緊急帝王切開で出生した.出生時体重1,085 g.Apgarスコアは8/7.呼吸窮迫症候群に対して,出生8分後に気管挿管施行し人工呼吸管理を行った.生後16時間で腹部膨満と全身蒼白がみられ,血液検査でHb 5.7 g/dlと著明な低下を認めた.腹部超音波検査で,腹水と脾門部血腫を認めたが,脾損傷の確定診断はできなかった.腹部造影CT検査を通常量70%のイオパミドール静脈投与で施行し,脾門部血管損傷(HV)のない複雑深在性脾損傷(IIIb)と診断し,輸血による保存的治療を開始した.新生児のCT検査には,造影剤投与は推奨されないが,投与量について考慮し,輸液を負荷することで安全に検査が施行でき,有用な情報が得られるものと考える.

  • 西堀 重樹, 縫 明大, 橋本 さつき, 浜田 弘巳, 木村 幸子, 高橋 秀史
    2020 年 56 巻 1 号 p. 95-99
    発行日: 2020/02/20
    公開日: 2020/02/20
    ジャーナル フリー

    今回,小児期に発症した黄色肉芽腫性胆囊炎(XGC)の1例を経験したので報告する.症例は13歳10か月の女児.腹痛を主訴に前医を受診し,炎症反応上昇と胆石・胆囊壁肥厚を認め急性胆囊炎と診断された.保存的治療で一時軽快したが食後の腹痛のため入退院を繰り返し,精査・加療目的に当院紹介となった.入院時に胆囊炎症状を認めなかったが保存的治療抵抗性の胆石・胆囊炎と判断し,腹腔鏡下胆囊摘出術(LC)を施行した.術後の病理組織診断でXGCと診断され,急性胆囊炎から黄色肉芽腫形成までの過程が観察された.小児の胆石症において腹痛を繰り返す場合,炎症反応の上昇を伴わなくてもXGC発症の可能性を考えて,超音波検査で胆囊壁の変化を注意深く観察し早期のLC施行を考慮する必要があると思われた.

  • 山岡 敏, 上原 秀一郎, 石塚 悦昭, 星 玲奈, 後藤 俊平, 吉澤 信輔, 川島 弘之, 金田 英秀, 大橋 研介, 越永 従道
    2020 年 56 巻 1 号 p. 100-104
    発行日: 2020/02/20
    公開日: 2020/02/20
    ジャーナル フリー

    副脾の発生頻度は剖検例の10~30%とされ,ほとんどは無症状で経過する.今回,腹腔内腫瘤の診断で開腹手術を施行し,術中に副脾捻転と診断した1例を経験した.症例は7歳,男児.左上腹部痛を主訴に前医を受診し,左上腹部腫瘤にて当科へ紹介となった.超音波検査では血流の乏しい充実性腫瘤を認め,造影CT検査では径6 cmで腫瘤内部は造影効果に乏しく,MRI検査ではT1強調画像で低信号,T2強調画像で等信号を示した.腹部腫瘤の診断のもと,開腹手術を施行した.腹腔内に,約6×7 cmの黒褐色で弾性硬な腫瘤を認めた.腫瘤の一部に大網と小腸が癒着しており,捻れた栄養血管を認め,これを結紮切離して,腫瘤を摘出した.摘出標本の病理組織診断と併せ,副脾捻転による副脾梗塞と診断した.術後経過は良好で術後10日で退院となった.小児の副脾捻転は術前診断が困難なことが多く,腹痛の鑑別診断として考慮するべきであると考えられた.

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