症例は8歳女児.6歳時にシトルリン血症に対して肝左葉グラフトによる生体部分肝移植を施行された.移植後2年目に,腹痛および嘔吐で癒着性腸閉塞を発症した.腹部単純X線で右横隔膜下に拡張した腸管を認め,イレウス管を挿入し経過観察した.第8病日に症状改善し,イレウス管を抜去し食事を開始すると症状が再燃した.保存的治療による改善がなく手術適応となった.開腹時,創直下腹壁と肝切離部辺縁に結腸の強い癒着を認めた.さらに肝切離面に小腸の癒着と索状物による小腸の狭窄を認めた.結腸の癒着剥離を行い,狭窄部を含め小腸を部分切除後,端々吻合した.術中の肝血管や胆管合併症はなかった.術後経過は順調で,術後14日目に退院した.小児部分肝移植後の消化管合併症で,癒着性腸閉塞の報告は比較的少なく,本症例と同様の肝切離面による癒着から腸閉塞を来した報告は認めなかった.癒着性腸閉塞による再開腹術を避けるために,生体部分肝移植時の肝切離面による腸管との癒着防止の工夫も重要と考えられた.