日本小児外科学会雑誌
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原著
ボタン・コイン形電池の誤飲に関する国内多施設アンケート調査
金森 大輔大橋 伸介梶 沙友里内田 豪気馬場 優治芦塚 修一大木 隆生
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2020 年 56 巻 2 号 p. 183-187

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抄録

【目的】コイン形リチウム電池の誤飲においては食道気管瘻等の重篤な消化管障害を認めることが知られている.日本小児外科学会ホームページ等でも注意喚起されているが実際の事故は後を絶たない.これまでに事故件数や重症度等の詳細な情報がないため,今回全国調査を行った.

【方法】日本小児外科学会,日本小児救急医学会,日本小児内視鏡研究会に所属する202施設に対し,アンケート調査を行った.質問内容は,①2011年1月1日から2015年12月31日の5年間に各施設で経験したボタン・コイン形電池誤飲の症例数,②電池の種類(ボタン形電池,コイン形電池),③発見時の電池の位置(食道,胃,十二指腸以降),④摘出方法(自然排出,マグネット,内視鏡,その他),⑤予後(良好,不良;狭窄や穿孔などの合併症あり)とした.

【結果】116施設(57.4%)から回答を得た.電池誤飲は939件あり,内訳はボタン形電池誤飲806件,コイン形電池誤飲133件であった.ボタン形電池誤飲における消化管障害は,電池を食道内に認めた12件のうち1件(8.3%)のみであった.また,電池を胃内に認めた530件では障害を認めなかった(予後不明6件を除く).十二指腸以降にボタン形電池を認めた264件においても障害は認めなかった(予後不明2件を除く).コイン形電池誤飲では45件が食道内で発見され,うち14例(31.1%)に障害を認めた.胃内に認めた71件には障害なく(予後不明2件を除く),十二指腸以降に通過していた17件においても障害を認めなかった.

【結論】ボタン電池を誤飲した場合には,発見部位および電池種類の確認が重要となり,コイン形電池が食道内に停滞していると判断される場合には速やかな摘出が望ましいと考えられた.

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