日本小児外科学会雑誌
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原著
Intestinal volvulus without malrotationの診断時期と治療成績の検討
井上 成一朗小高 明雄牟田 裕紀竹内 優太加部 一彦馬場 一憲
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2020 年 56 巻 4 号 p. 376-382

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抄録

【目的】腸回転異常を伴わない小腸捻転(intestinal volvulus without malrotation: IVWM)は近年出生前診断も報告されているが,手術時に確定診断を得る症例もあり,診断経緯は多岐にわたる.我々はIVWMの確定診断が得られた時期と治療成績について検討した.

【方法】2013年1月から2019年12月までに当センターで経験したIVWMについて診療録を基に診断時期,術前の画像診断,手術所見及び予後について後方視的に検討した.

【結果】合計16例のIVWMを経験し,8例が胎児超音波で腹部異常を指摘され,うち4例は胎児超音波検査でwhirlpool状の小腸捻転所見の描出を得,出生後に腸回転異常がないことを確認した.4例は胎児腹水や腸管拡張等の間接所見を認め,生後早期の開腹手術でIVWMの確定診断を得た.胎児超音波検査で腹部異常を指摘されていない8症例のうち4例はイレウスを疑われ新生児搬送され,腹部症状と画像診断で消化管捻転を強く疑い開腹手術を施行した.4例は他の消化管異常を疑い開腹手術を施行し確定診断を得た.出生前診断症例で妊娠早期に娩出せざるを得なかった1例は死亡したが他は全例生存退院した.

【結論】胎児超音波検査での捻転腸管の直接描出が有効だが間接所見が得られた場合も当該疾患を想定し手術に臨めば良好な予後が得られた.出生後に発症した症例も,迅速な対応で良好な予後を得たが,他疾患を疑い開腹所見で確定診断に至った症例がありIVWMを念頭に置いた迅速な対応の重要性を感じさせた.

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