日本小児外科学会雑誌
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56 巻, 4 号
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おしらせ
追悼文
秋季シンポジウム記録
原著
  • ―遺糞症例の特徴と発達障害との相関―
    町頭 成郎, 山田 和歌, 永井 太一朗, 村上 雅一, 矢野 圭輔, 馬場 徳朗, 山田 耕嗣, 向井 基, 加治 建, 家入 里志
    2020 年 56 巻 4 号 p. 351-357
    発行日: 2020/08/20
    公開日: 2020/08/20
    ジャーナル フリー

    【目的】当科で経験した慢性機能性便秘症の症例を集計し,患者背景・治療内容・治療成績について考察を行った.

    【方法】2018年1月~12月に当科で経験した慢性機能性便秘症48例を対象とした.患者背景として性別と初・再診,発症月齢,病悩期間,初診時月齢を,また治療内容に関しては便塞栓の除去の方法と治療薬の変遷,乳製品制限の有無を,治療成績に関して現在の受診状況と排便抑制と遺糞の改善状況,乳製品制限の効果について診療録を後方視的に検討した.

    【結果】48例の内訳は男児26例,女児22例,初診16例,再診32例であった.便秘発症月齢は7.5か月,初診時月齢は42か月,病脳期間は30.8か月であった(いずれも中央値).また初診時の自排便,排便抑制,遺糞の有無はそれぞれ26例/22例,38例/10例,16例/32例であった.治療効果として排便抑制は38例中30例(78.9%)で消失したが,遺糞は16例中10例(62.5%)で残存した.乳製品制限を行った35例中25例(71.4%)でその有効性を認めた.遺糞を有する症例では非遺糞症例より発症月齢(p=0.027)と初診時月齢(p=0.0001)はともに有意に遅い時期となっており,なおかつ病悩期間が有意に長く(p=0.017),発達障害の有病率も有意に高かった(p=0.00364).

    【結論】遺糞症例では発症月齢が遅く,病脳期間も長い傾向にあることから早期の治療介入を行うことで遺糞症状を軽減できる可能性がある.また発達障害の合併率が高いことから,より治療効果を高めるためには従来の便秘治療のみでなく,小児神経専門医との連携も必要と考えられた.

  • 江里口 光太郎, 岡本 晋弥, 鹿子木 悠, 渡邉 健太郎, 片山 哲夫
    2020 年 56 巻 4 号 p. 358-364
    発行日: 2020/08/20
    公開日: 2020/08/20
    ジャーナル フリー

    【目的】腹腔鏡下虫垂切除術(laparoscopic appendectomy;LA)を施行した6歳以下の幼児急性虫垂炎症例,特に穿孔症例の臨床的特徴を明らかにすることを目的とした.

    【方法】2年5か月間に当施設でLAを施行した急性期症例117例を対象とし,6歳以下を幼児群,7歳以上15歳以下を学童群として比較検討を行った.さらに幼児群を穿孔群と非穿孔群に分けて同様の検討を行った.全例開腹移行はなかった.方法は診療記録の後方視的観察研究とし,患者背景,病悩期間,術前症状及び身体所見,採血結果(白血球数,C-reactive protein;CRP),画像診断及び糞石像の有無,虫垂穿孔,手術時間とドレーン挿入,病理所見(壊疽性虫垂炎),入院期間,術後合併症を評価項目とした.

    【結果】幼児群19例と学童群98例で有意差を認めた評価項目は発熱(78.9 vs 51.0%),CRP(5.50 vs 2.37 mg/dl),虫垂穿孔(63.2 vs 19.4%),手術時間(88 vs 65分),ドレーン挿入(36.8 vs 10.2%),壊疽性虫垂炎(78.9 vs 45.9%),入院期間(8 vs 6日)であり,幼児穿孔群12例と非穿孔群7例では手術時間(96 vs 55分)と入院期間(9 vs 6日)に有意差を認めた.幼児群の術後合併症は膿瘍形成1例(5.3%)とイレウス1例(5.3%)であった.

    【結論】幼児群は病悩期間が同等でも学童群と比較して高い穿孔率を認めたため,注意が必要である.幼児穿孔群は非穿孔群と比較して有意に手術時間及び入院期間が長かった.幼児急性虫垂炎に対する腹腔鏡下手術は安全に施行可能であった.

  • 山本 裕輝, 田中 潔, 出家 亨一, 追木 宏宣
    2020 年 56 巻 4 号 p. 365-369
    発行日: 2020/08/20
    公開日: 2020/08/20
    ジャーナル フリー

    【目的】極・超低出生体重児の小腸ストーマ閉鎖術(以下:閉鎖術)の至適時期に関する検討は少なく,指標も明確ではない.当科での症例をもとに閉鎖術の至適時期についての検討を行った.

    【方法】2004年1月1日から2018年12月31日までに当院で小腸ストーマ造設術を行った壊死性腸炎,限局性腸管穿孔,胎便関連性腸閉塞の患者のなかで極・超低出生体重児である30例のうち,閉鎖術が行われた19例(63.3%)を解析し,閉鎖術時の体重が1,500 g以上のA群11例と1,500 g未満のB群8例に分けて2群間での比較を行った.

    【結果】A群は閉鎖術時の体重は2,100 g(1,610~3,640 g)で,B群では1,339 g(890~1,460 g)であった.A群では閉鎖術後ミルク開始日は4(3~23)日で,B群は6(3~19)日で有意差はなく,ミルクが100 ml/kg/dayになったのはA群は閉鎖術後10(6~31)日で,B群は閉鎖術後17.5(5~46)日で両群間に有意差はなかった.体重増加は,小腸ストーマ造設術から閉鎖術までの平均値はA群で11.8 g/day,B群で6.4 g/dayと有意差を認めたが,閉鎖術後から退院までの平均値ではA群は17.3 g/day,B群では17.1 g/dayと有意差はなかった.A群に再手術となった例を2例(18.2%),B群に再手術を1例(12.5%)認め,再手術率にも有意差はなかった.19例は全例生存し,術中合併症は認めなかった.

    【結論】極・超低出生体重児の小腸ストーマ閉鎖術は体重が1,500 g未満でも安全に施行できると考えられた.

  • ―治療成績とinterval appendectomy脱落予測因子を踏まえて―
    久松 千恵子, 辻 恵未, 畠山 理
    2020 年 56 巻 4 号 p. 370-375
    発行日: 2020/08/20
    公開日: 2020/08/20
    ジャーナル フリー

    【目的】小児複雑性虫垂炎のより良い治療法を,interval appendectomy(以下IA)脱落予測因子と治療成績を踏まえて検討した.

    【方法】対象は2009年1月~2018年12月に当院で治療した複雑性虫垂炎144例.緊急手術群と抗生剤加療先行のIA企図群に分け治療前評価項目を比較した.IA企図群をIA成功群,IA脱落群,IA非実施群に細分し,IA成功群とIA脱落群の比較からIA脱落予測因子を抽出した.治療成績は緊急手術群,IA成功群,IA脱落群の3群間で比較した.手術は全例腹腔鏡下で行った.

    【結果】緊急手術群104例,IA企図群40例(IA成功群25例,IA脱落群9例,IA非実施群6例).IAは,下痢があり,CRP高値,大きな膿瘍形成があり,診断までに日数を要した症例に選択される傾向にあった(全てp<0.01).糞石有りの症例は緊急手術を選択する傾向にあった(p=0.006).IA企図の場合,IA脱落群はIA成功群に比べ,年齢が高く,虫垂は太く,糞石を認めたが,膿瘍は小さい傾向だった(全てp<0.04).IA脱落予測因子は糞石有りと膿瘍最大径の2因子で,特に糞石有り(オッズ比25.06)は重要な因子となった.治療成績では,手術時間はIA成功群が,総入院日数は緊急手術群が有意に短かった(共にp<0.001).開腹移行はIA脱落群に多かった(p=0.01).

    【結論】複雑性虫垂炎の治療成績では,IAは手術時間が短く,緊急手術は総入院日数が短い利点があった.しかしながら,糞石有りの症例はIA企図から脱落する可能性が示唆され,治療法を選択する上で留意が必要である.

  • 井上 成一朗, 小高 明雄, 牟田 裕紀, 竹内 優太, 加部 一彦, 馬場 一憲
    2020 年 56 巻 4 号 p. 376-382
    発行日: 2020/08/20
    公開日: 2020/08/20
    ジャーナル フリー

    【目的】腸回転異常を伴わない小腸捻転(intestinal volvulus without malrotation: IVWM)は近年出生前診断も報告されているが,手術時に確定診断を得る症例もあり,診断経緯は多岐にわたる.我々はIVWMの確定診断が得られた時期と治療成績について検討した.

    【方法】2013年1月から2019年12月までに当センターで経験したIVWMについて診療録を基に診断時期,術前の画像診断,手術所見及び予後について後方視的に検討した.

    【結果】合計16例のIVWMを経験し,8例が胎児超音波で腹部異常を指摘され,うち4例は胎児超音波検査でwhirlpool状の小腸捻転所見の描出を得,出生後に腸回転異常がないことを確認した.4例は胎児腹水や腸管拡張等の間接所見を認め,生後早期の開腹手術でIVWMの確定診断を得た.胎児超音波検査で腹部異常を指摘されていない8症例のうち4例はイレウスを疑われ新生児搬送され,腹部症状と画像診断で消化管捻転を強く疑い開腹手術を施行した.4例は他の消化管異常を疑い開腹手術を施行し確定診断を得た.出生前診断症例で妊娠早期に娩出せざるを得なかった1例は死亡したが他は全例生存退院した.

    【結論】胎児超音波検査での捻転腸管の直接描出が有効だが間接所見が得られた場合も当該疾患を想定し手術に臨めば良好な予後が得られた.出生後に発症した症例も,迅速な対応で良好な予後を得たが,他疾患を疑い開腹所見で確定診断に至った症例がありIVWMを念頭に置いた迅速な対応の重要性を感じさせた.

症例報告
  • 荻野 恵, 松寺 翔太郎, 渡邊 峻, 谷 有希子, 山口 岳史, 岡本 健太郎, 中島 政信, 山口 悟, 土岡 丘, 小嶋 一幸
    2020 年 56 巻 4 号 p. 383-387
    発行日: 2020/08/20
    公開日: 2020/08/20
    ジャーナル フリー

    症例は8か月,女児.発熱と嘔吐のため近医を受診した.翌日に腹部膨満が出現し当院へ搬送された.血液検査で炎症反応上昇と血清膵アミラーゼ値上昇を認めた.腹部MRI検査よりAltman IV型仙尾部奇形腫を疑った.絶食と抗菌薬投与にて炎症反応の改善後に手術を予定した.術前に経口摂取を再開したところ,腹部症状の再燃と血清膵アミラーゼ値の再上昇を認めたため,腫瘍内膵組織の存在を疑った.再度絶飲食とし,第18病日に腹仙骨式腫瘍摘出術を施行した.病理組織所見より膵組織を含む成熟囊胞性奇形腫と診断した.また腫瘍内容液および腹水の生化学検査で膵アミラーゼなどの膵酵素上昇を認めた.腫瘍内に膵組織を含み,腫瘍内膵組織から放出された膵酵素により腹膜炎が惹起されたと考えられたAltman IV型仙尾部奇形腫の症例を経験した.腫瘍内に異所性膵組織がある場合,それ自体から分泌される膵酵素により周囲臓器の炎症を来す可能性がある.

  • 花田 学, 古村 眞, 尾花 和子, 江村 隆起, 宮國 憲昭, 都築 義和, 今枝 博之
    2020 年 56 巻 4 号 p. 388-391
    発行日: 2020/08/20
    公開日: 2020/08/20
    ジャーナル フリー

    症例は3歳男児.当院受診4日前より感冒症状あり,近医受診し感冒薬処方された.嘔吐と黒色泥状便を認め当院紹介受診.Hb 11.3 g/dlであったが便潜血陽性であり,精査加療目的に入院となった.翌日顔色不良となり,Hb 6.3 g/dlと低下を認めた.腹部造影CT検査を施行し,胃壁肥厚と胃穹窿部4 cm大の囊胞状腫瘤性病変を認めた.輸血し全身麻酔下上部消化管内視鏡検査を行った.穹窿部に出血性胃潰瘍と粘膜下隆起病変を認め,止血術を行った.プロトンポンプ阻害薬(PPI)投与にて出血がコントロールできなければ胃腫瘍摘出術を行う方針とした.Hb 11 g/dl台に保たれ,黒色便は消失した.第12病日に腫瘤精査に超音波内視鏡検査を行ったが,腫瘤は縮小し潰瘍も瘢痕治癒していた.6か月後の内視鏡検査では潰瘍は治癒しており,隆起性病変を認めなかった.初回のCTの再読影により,隆起性病変はCT値から胃壁内血腫と判断した.

  • 赤峰 翔, 大津 一弘, 植野 百合, 亀井 尚美
    2020 年 56 巻 4 号 p. 392-395
    発行日: 2020/08/20
    公開日: 2020/08/20
    ジャーナル フリー

    日齢39,女児.黄疸の増悪と灰白色便で当科紹介.直接ビリルビン優位の黄疸を認め,腹部超音波検査で索状胆囊を認めた.胆道シンチグラフィーで胆汁排泄が確認できないため,日齢50で試験開腹術を施行.肉眼的所見および術中胆道造影検査では肝内胆管の造影がはっきりせず,III-a2-οの胆道閉鎖症と診断し葛西手術を施行した.術中施行した肝生検でAlagille症候群(以下,AGS)が疑われ精査開始.肝外病変として末梢性肺動脈狭窄,蝶様椎体を認め,遺伝子検査でJAG1遺伝子変異を認めた.新生児および乳児黄疸で胆道閉鎖症が疑われた場合は,術前の血液検査および画像検査,術中胆道造影所見でAGSとの鑑別が困難なことがあるため,疑診時での椎体レントゲン検査,心臓超音波検査等のAGSの肝外病変の検索,術中迅速検査での肝生検を考慮すべきである.

  • 兒島 正人, 栗原 將, 上田 祐華, 檜山 英三
    2020 年 56 巻 4 号 p. 396-401
    発行日: 2020/08/20
    公開日: 2020/08/20
    ジャーナル フリー

    患者は11歳男児,乳児期より口唇と手指に黒色の点状色素沈着を認め,10歳頃より時折,腹痛を認めていた.貧血に対する精査により胃から直腸に散在するポリープと回腸に重積を来す過誤腫性ポリープを認めた.ダブルバルーン内視鏡下に重積を整復後,ポリペクトミーを試みるも切除困難であった.よって開腹手術によるポリープの外科的切除に加えて術中内視鏡による小腸深部の消化管ポリポーシスの観察を施行した.病理診断にてポリープは過誤腫性ポリープでありPeutz-Jeghers症候群と診断した.本症では,定期的な消化管ポリープのサーベイランスによりポリープの増大,腸重積症を未然に防ぎ,外科的切除を回避することが望ましい.しかし,外科的切除が必要になった場合には,術中内視鏡を施行し,消化管ポリープの観察,切除を行うことによって日頃の負担を軽減でき,P-J症候群の患児のQOLの改善につながると考えられた.

  • 仲野 聡, 高須 英見, 長谷川 美和, 井岡 笑子, 小野 靖之
    2020 年 56 巻 4 号 p. 402-406
    発行日: 2020/08/20
    公開日: 2020/08/20
    ジャーナル フリー

    性分化疾患(DSD)は女児鼠径ヘルニアの約1%で合併し注意を要する.卵巣滑脱のない鼠径ヘルニアに対する腹腔鏡下鼠径ヘルニア根治術(LPEC)を契機に診断されたDSDを3例経験したので報告する.症例1・2は7歳と4歳の姉妹.姉は右Potts手術既往あり.卵巣滑脱はなく,姉は左,妹は両側のLPECを予定した.術中所見で精巣様性腺と精管あり,卵管・子宮はなく,DSDを疑い観察のみとした.完全型アンドロゲン不応症(CAIS)と診断し,後日に両側性腺摘出術・LPECを施行した.症例3は6歳女児.卵巣滑脱はなく,両側のLPECを予定した,術中所見で子宮がなく,DSDを疑い観察のみとした.ロキタンスキー(MRKH)症候群と診断し,後日にLPECを施行した.術前超音波検査で卵巣滑脱を認めない場合にもDSDを考慮する必要がある.LPECは術中に内性器を容易に観察でき,DSDの早期診断に有用である.

  • 渡邊 峻, 小梛 地洋, 酒井 正人, 久保田 喜久, 大塚 由一郎, 橋本 卓史, 藤澤 知雄, 羽賀 洋一, 小原 明, 黒岩 実
    2020 年 56 巻 4 号 p. 407-413
    発行日: 2020/08/20
    公開日: 2020/08/20
    ジャーナル フリー

    症例は潰瘍性大腸炎の加療歴を有する14歳女児.腹痛精査の腹部超音波検査で肝外側区域に長径12 cmの多血性の多結節性腫瘍を認めた.術前画像所見では,中心瘢痕がみられたが,車軸状動脈血流はみられず,辺縁の拡張した肝動脈から肝静脈へのearly venous returnも確認されたため,肝血管筋脂肪腫も鑑別疾患に挙がった.最大径が14 cmへと増大する傾向に加え有症状であることから,肝腫瘍に対し肝外側区域切除を行い腹痛は消失した.病理組織診断は限局性結節性過形成(FNH)であった.FNHは小児肝良性腫瘍中,肝血管腫に次ぐ頻度で見られ,門脈域形成異常症候群の一種とされる.FNHの典型的画像所見には中心瘢痕と車軸状動脈血流があるが,文献上これらの画像所見がみられない場合も多い.通常FNHの悪性化は稀であり経過観察が行われるが,有症状例や非典型的な画像を示す例,巨大例では外科的介入が行われる.

  • 白根 和樹, 増本 幸二, 千葉 史子, 佐々木 理人, 小野 健太郎, 神保 教広, 五藤 周, 瓜田 泰久, 新開 統子, 高安 肇
    2020 年 56 巻 4 号 p. 414-420
    発行日: 2020/08/20
    公開日: 2020/08/20
    ジャーナル フリー

    症例は14歳男児.来院3か月前に左側腹部痛を自覚し,その後も症状が反復するため来院2週間前に前医を受診した.造影CT検査で脾臓近傍に10 mm大の腫瘤を認めたため副脾捻転が疑われ,当院紹介となった.造影MRI検査でも同様の診断で待機的に腹腔鏡下腫瘤摘出術の方針とした.術中に脾臓近傍の大網内に表面平滑な淡赤色の腫瘤を認め,腹腔鏡下に摘出した.内部が白色の充実性腫瘤で,病理学的には腫瘤の中心にアニサキス虫体を認め,消化管外アニサキス症と診断した.消化管外アニサキス症は初回感染時に虫体が消化管壁を貫通し,腹腔内で緩徐に肉芽腫を形成することで発症する.アニサキス症全体の0.5%とまれな疾患であり,術前診断は困難である.多くは無症状で経過し他疾患の術中に偶然発見されるが,一部は肉芽腫が原因となって腹痛を引き起こすこともあるため,注意が必要であると考えられた.

  • 高尾 智也, 上野 悠
    2020 年 56 巻 4 号 p. 421-425
    発行日: 2020/08/20
    公開日: 2020/08/20
    ジャーナル フリー

    症例は15歳の男児.腹痛を主訴に前医を受診し,汎発性腹膜炎の診断で当院へ紹介された.身体所見で腹膜刺激症状を認め,腹部CT検査で腹水とclosed loopを形成した絞扼性イレウスと診断した.さらに,回腸から連続し口側が狭窄した先端が盲端の管腔構造を認め,絞扼性イレウスを伴ったMeckel憩室茎捻転の診断で緊急手術を施行した.全身麻酔下に臍縦切開にて腹腔鏡で観察すると,回盲部から約50 cm口側でMeckel憩室を認め,憩室及びその先端から腸間膜に連続する索状物により絞扼性イレウスを来たし,さらに憩室はその茎部で360度捻転し暗赤色に変色していた.索状物を切離すると絞扼腸管は色調が改善し腸管切除は行わず,Meckel憩室楔状切除を施行した.術後経過良好で術後10日目に退院した.開腹歴のない小児のイレウスは,Meckel憩室の関与を念頭に置き,診断および治療を行っていくことが重要であると考えられた.

  • 山口 隆介, 世川 修, 末吉 亮, 牧 ゆかり, 古橋 七海, 小川 正樹
    2020 年 56 巻 4 号 p. 426-430
    発行日: 2020/08/20
    公開日: 2020/08/20
    ジャーナル フリー

    【症例1】在胎22週,超音波検査にて肺分画症の胎児診断に至った.在胎25週に行った胎児MRIでは分画肺は右胸腔の2/3を占めていたが,在胎26週以降に分画肺の縮小を認めた.出生後の造影CTでも,胎児期と比較し明らかに病変が縮小していることが観察された.待機的に胸腔鏡下右肺下葉切除を施行した.【症例2】在胎21週,超音波検査にて右胸腔1/3を占める分画肺と異常血管を認め肺分画症の診断に至った.在胎26週には分画肺の縮小を認め,さらに在胎30週以降には分画肺は観察されなくなった.出生後の造影CTでは右肺下葉背側に小さな分画肺が確認され,待機的に胸腔鏡下右肺下葉切除を施行した.【考察】超音波精度の向上に伴い,在胎中に異常血管が描出され肺分画症の確定診断が得られることが増えている.我々が経験した2例は胎児期に肺分画症と診断することができたと共に,その在胎中の縮小変化を定量的に評価することができたので報告する.

あとがき
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