2020 年 56 巻 6 号 p. 932-938
【目的】小児の外傷性膵損傷では,特に主膵管損傷例の治療における一定の見解はない.当科では保存的治療を可能な限り優先して行ってきたが,その妥当性について検討した.
【方法】2000年から2019年の間に当科で治療した外傷性膵損傷18例を対象とし,診療録を用いて後方視的に検討した.
【結果】年齢中央値は7.1歳(0.9~14.5歳)であった.日本外傷学会臓器損傷分類によりI型9例,II型2例,IIIa型2例,IIIb型5例に分類された.膵仮性囊胞は5例(I型2例,IIIa型1例,IIIb型2例)に認め,全例でドレナージ(開腹1例,経皮4例)が行われた.I・II型では血性腹水を伴う膵囊胞に対する開腹囊胞ドレナージ術と,肝実質損傷に対する肝縫合術およびドレナージ術が初期治療としてそれぞれ1例に行われた.IIIb型のうち2例では,合併した肝実質損傷に対する開腹止血術およびドレナージ術,代償性ショックと大量腹水に対する膵尾部切除術およびドレナージ術が初期治療としてそれぞれ1例で行われた.IIIb型の別の2例では,膵液瘻に対するLetton-Wilson手術,膵仮性囊胞増大に対する囊胞胃吻合術が経過中にそれぞれ1例で行われた.内視鏡的逆行性膵管造影(ERP)は3例で施行されたが,いずれも受傷から1週間以上経過し,損傷部を超えた膵管ステント留置は困難であった.
【結論】IIIb型では手術を要する症例が多く,主膵管損傷を伴う場合は早期手術介入を検討すべきである.