日本小児外科学会雑誌
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原著
年長児腸重積症自験10例に対する臨床的検討
馬場 徳朗生駒 真一郎村上 雅一杉田 光士郎松久保 眞武藤 充川野 孝文町頭 成郎野口 啓幸家入 里志
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2021 年 57 巻 7 号 p. 1049-1056

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抄録

【目的】年長児腸重積症(以下本症)の発生頻度は少ないが,病的先進部を有する割合が多いとされている.年長児の本症に対しては一定の診療指針がなく,症例毎に様々なアプローチがなされている.今回,年長児症例に対する適切な診断,治療法を確立すべく自験例を後方視的に検討した.

【方法】2007年1月~2017年12月の間に,鹿児島市立病院小児外科に入院した5歳以上の腸重積症10例を対象とし,診療録を用いて後方視的に検討した.

【結果】対象は男児6例,女児4例,年齢は5~14歳であった.主要症状は,腹痛10例,嘔吐6例,血便2例であった.8名に非観血的整復が行われ,全例整復に成功したが,その内4例が1~5回再発した.病的先進部は3例(30%)に認められた.重積のタイプは,9名が回結腸型,1名が小腸小腸型であった.手術適応を5例に認め,そのうち整復後に再発をきたした3例において,術中腸管壁肥厚を触知し,悪性疾患が否定できないため,回盲部切除または腸管壁生検を行ったが,病理診断は,リンパ濾胞過形成または炎症性変化であった.病的先進部の検索で,腹部CT検査が9例に行われ,その他症例に応じてメッケル憩室シンチグラム,MRI検査,大腸内視鏡検査が行われていた.

【結論】画像検査による病的先進部の検索には限界があり,本症を繰り返す症例には,手術が選択されることが多かった.本症は再発例でも特発性が一定の割合で存在するため,その都度非観血的整復を繰り返し,大腸内視鏡検査も含めた病的先進部の検索を行うことが不必要な手術の減少につながると思われた.

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