2021 年 57 巻 7 号 p. 1041-1048
【目的】胎児期・新生児期に発見される卵巣囊腫は超音波検査(US)の所見でsimple cyst(SC)とcomplex cyst(CC)に分類される.CCは卵巣捻転を示唆し従来手術適応とされたが,近年経過観察する報告も認める.今回CCに対する手術と経過観察の適応を明らかにすることを目的とした.
【方法】1990年1月から2018年3月に当院で診療した新生児卵巣囊腫99例中CC 15例17病変(片側13例,両側2例)の治療内容や経過を後方視的に調査した.
【結果】全例が胎児診断された.診断時CCは4病変で,胎児期に6病変,出生後早期に6病変,外来経過観察中に残り1病変がSCからCCに変化した.生後手術を5例6病変(片側4例,両側1例)に行い,10例11病変(片側9例,両側1例)は経過観察した.手術例のうち,両側捻転1例では囊腫核出術を施行したが原発性無月経となり内分泌治療を要した.片側捻転4例のうち遊離囊胞2例で脱落卵巣を摘出し,残り2例では卵巣を摘出した.片側2例は10歳以上まで観察し1例で初経を確認した.経過観察例では短期・長期合併症を認めなかった.1例は2歳まで囊腫が残存し手術を検討中で,他の9例では囊腫は縮小しUSで確認できなくなった.観察期間は中央値2.7(1~11.6)歳で,4例5病変で患側卵巣を確認した.2例を10歳以上まで観察し,うち1例で初経を確認した.
【結論】CCに対して,経過観察は合併症なく安全で卵巣温存例もあり有用と思われた.手術は有症状例や数日以内のCC発症例で卵巣温存術が適応となり,生後1年以降も囊腫が残存する例でも手術を念頭に注意深く経過観察を行う必要がある.