2022 年 58 巻 1 号 p. 68-72
症例は12歳の女児で乳児期より四肢に多発する骨軟骨腫を認め,近医整形外科にて経過観察の方針となっていた.12歳時に誘因なく胸痛および呼吸困難が出現し,前医で胸部CT上右血胸と右第7肋骨に棘状の骨軟骨腫を認めた.保存的加療にて血胸は軽快し,精査加療目的に当科紹介となった.外傷の既往がなかったことより,肋骨骨軟骨腫による血胸と診断し,発症から20日後に胸腔鏡補助下肋骨部分切除術を施行した.第7肋骨部に胸腔へ突出する軟骨腫を認め,同部位による臓側胸膜の線維性癒着を伴っていた.第8肋骨部にも骨突出を認めるものの,臓側胸膜の癒着は認めず,血胸の原因は第7肋骨の病変と判断し,第7肋骨部分切除術を行った.術後経過は良好で術後6日目に退院となった.以降,再出血や呼吸器症状の出現なく経過観察中である.明らかな誘因なく発症した血胸では本症も鑑別に挙げ速やかに診断,加療する必要があると考えられた.