日本小児外科学会雑誌
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58 巻, 1 号
選択された号の論文の17件中1~17を表示しています
おしらせ
学術集会記録
症例報告
  • 松井 まゆ, 春松 敏夫, 川野 孝文, 村上 雅一, 長野 綾香, 杉田 光士郎, 矢野 圭輔, 大西 峻, 加治 建, 家入 里志
    2022 年 58 巻 1 号 p. 29-34
    発行日: 2022/02/20
    公開日: 2022/02/20
    ジャーナル フリー

    今回,鼠径部アプローチに経陰囊操作を加えて高位精巣摘除術(本法)を行った精巣原発卵黄囊腫瘍の2幼児例を経験した.【症例1】1歳8か月男児.左陰囊腫大とAFPの上昇(1,593 ng/ml)を認め,精巣腫瘍を疑い,本法を行った.精巣は26×23 mmと腫大し,内部は充実性で単一の腫瘍であった.病理では卵黄囊腫瘍の診断で精巣内に限局しており,病期I期の診断となった.【症例2】1歳8か月男児.左陰囊腫大とAFPの上昇(668 ng/ml)を認め,精巣腫瘍を疑い,本法を行った.精巣は35×25 mmと腫大し,内部は多結節性で正常精巣組織を一部に認めた.病理では卵黄囊腫瘍の診断で精巣内に限局しており,病期I期の診断となった.【結語】病期I期の卵黄囊腫瘍は予後良好であるが,術中操作が術後診断や予後に影響を与える可能性がある.本法を行うことで,より適切な手術操作を行うことが可能であると考えられた.

  • 井深 奏司, 児玉 匡, 稲垣 優, 吉村 孝一, 阪 龍太
    2022 年 58 巻 1 号 p. 35-39
    発行日: 2022/02/20
    公開日: 2022/02/20
    ジャーナル フリー

    小児外傷性膵損傷IIIbの治療アルゴリズムは,未だ確立していない.当院で経験した小児外傷性膵損傷IIIbの2例を報告する.症例1は,3歳女児.当初IIIa型と診断されていたが,受傷後13日目の造影CTでIIIb型と診断された.膵周囲の囊胞,腹水に対しドレナージを行うも改善は得られず,受傷後83日目に開腹脾温存膵体尾部切除術を施行した.術後経過良好である.症例2は,9歳男児.受傷後の造影CTでIIIb型と診断した.全身状態良好で,膵切除術を安全にできると判断し,開腹脾温存膵尾部切除術を受傷当日に施行した.術後膵液瘻を認めたが,保存的治療のみで改善し現在経過良好である.外傷性膵損傷IIIb型の初期治療として,膵液ドレナージが困難であり,全身状態が良好な場合には,膵切除術を選択しても良いと考えられた.

  • 川口 皓平, 大林 樹真, 脇坂 宗親, 古田 繁行, 北川 博昭
    2022 年 58 巻 1 号 p. 40-44
    発行日: 2022/02/20
    公開日: 2022/02/20
    ジャーナル フリー

    症例は11歳女児.既往歴なし.腹痛のため前医を受診し,腹部エックス線写真と腹部単純CTで複数の異物陰影が認められ当院紹介となった.当院で撮影した腹部エックス線写真では右下腹部に10個の連なった異物陰影を認めた.家族からの聴取で約1か月前の磁性玩具(ネオジム磁石)誤飲が疑われた.2日間経過しても腹部エックス線写真で異物陰影の移動がなく,腹部超音波検査で連なる異物は複数腸管に存在するという所見を得たため磁石間圧挫による腸管損傷の可能性を考慮して審査腹腔鏡を行った.術中所見で消化管異物は複数の磁石であり,回腸-上行結腸が磁石で圧挫され内瘻を形成していた.加えて更に口側の回腸にも穿孔を認めた.磁性玩具を摘出し,瘻孔切除後に縫合閉鎖した.複数の磁石誤飲は重篤な合併症を起こすことを認識し,症状が乏しくても経時的な画像評価を行い,審査腹腔鏡などの外科的治療の適応を検討すべきである.また磁性玩具の形状から発達障害のない学齢児童にも磁石誤飲による腸管損傷が起こる可能性を考慮し,診療を進める必要がある.

  • 福原 雅弘, 佐藤 智江, 内田 康幸, 坂本 浩一
    2022 年 58 巻 1 号 p. 45-51
    発行日: 2022/02/20
    公開日: 2022/02/20
    ジャーナル フリー

    症例は19歳,女性.Hirschsprung病類縁疾患(腸管神経節細胞僅少症)で高位空腸瘻を造設し,在宅中心静脈栄養を行っている.今回,CVポート周囲の痛みを主訴に入院となった.血液培養陽性でカテーテル関連血流感染症(以下CRBSI)としてCVポート入替と抗菌薬治療後に退院となった.しかし退院後12日目に発熱を主訴に受診となり,血液培養陽性で胸部CTでは両肺に多発する浸潤影を伴う結節影・空洞形成を認めた.CRBSIに伴う敗血症性肺塞栓症と診断し再入院となった.残存中心静脈ルートが限られていたためカテーテル温存として抗菌薬加療を開始したが呼吸状態が悪化したため中心静脈カテーテルを抜去した.抜去後は速やかに呼吸状態の改善を認め,抗菌薬治療とCVポート入替後に退院となった.本疾患においては胸部CTによる診断ならびに適切な抗菌薬による早期治療介入が必要である.自験例の経過と本疾患の報告例をまとめて報告する.

  • 原 理大, 奥村 健児, 山本 裕俊
    2022 年 58 巻 1 号 p. 52-56
    発行日: 2022/02/20
    公開日: 2022/02/20
    ジャーナル フリー

    症例は生後20日の男児.出生時より右側腹部の突出を認め,当科を紹介受診された.腹部超音波検査で肝右葉S7が部分的に側腹部皮下に脱出していた.さらに胸腹部エックス線写真と単純CT検査で,側弯症,肋骨・椎体の形成異常を認め,腰肋脊椎症候群(LCVS)に伴う先天性腰ヘルニア(CLH)と診断した.無症状であったが側腹部の突出が次第に目立ってきたため生後4か月目に直視下にCLH修復術を施行した.ヘルニア門は径4×3.5 cm大で,辺縁の筋・筋膜が菲薄化しており単閉鎖は困難であったためポリプロピレンメッシュを用いて閉鎖した.術後経過は良好で術後9日目に退院となった.LCVSは稀な疾患で骨格筋以外にも多彩な奇形を併存する症例があり,関連診療科と密に連携しながら長期の経過観察を要すると考えられた.

  • 金 聖和, 高瀬 洪生, 高山 慶太, 梅田 聡, 山道 拓, 田山 愛, 臼井 規朗
    2022 年 58 巻 1 号 p. 57-61
    発行日: 2022/02/20
    公開日: 2022/02/20
    ジャーナル フリー

    腸回転異常症に伴う中腸軸捻転(以下本症)の手術の際,小腸の大量切除を避け,虚血腸管の温存を試みることはしばしば経験する.今回我々は,本症手術で虚血腸管を温存したものの,温存腸管の機能障害のため術後栄養管理に苦慮した2例を経験した.【症例1】出生歴に異常のない男児.日齢3に本症手術を施行した.短腸症を回避するために壊死腸管のみを切除し,虚血小腸を温存して腸瘻を造設した.腸瘻閉鎖後も下痢症状が遷延し,残存腸管の吸収障害が疑われた.短腸症候群に準じた栄養管理が必要となった.【症例2】出生歴に異常のない男児.日齢1に本症手術を施行した.捻転解除後も小腸の広範囲に虚血変化が残存した.翌日再開腹したが虚血の進行はなく,全小腸を温存した.術後,腸管粘膜バリア機能障害が疑われる腸炎を複数回起こし,経腸栄養増量に難渋した.【まとめ】いずれの症例も長期的には腸管機能は回復し,経静脈栄養を離脱することができた.

  • 瀧本 篤朗, 津田 知樹, 武内 悠馬, 坂井 宏平, 東 真弓, 文野 誠久, 青井 重善, 古川 泰三, 田尻 達郎
    2022 年 58 巻 1 号 p. 62-67
    発行日: 2022/02/20
    公開日: 2022/02/20
    ジャーナル フリー

    症例は7歳男児,先天性横隔膜ヘルニア術後にて外来経過観察中の患児.1歳6か月時,スクリーニングの腹部エコーで肝下面に接する異所性脾を右季肋部に確認した.腹部症状,脾臓の遊走,脾機能亢進,脾梗塞などを認めないため経過観察の方針とした.その後も定期的に画像検索を継続していたが,7歳時のMRIにて骨盤内への脾臓の移動を認め,脾臓が原因と思われる膀胱圧迫症状も出現したため手術加療の方針となった.腹腔鏡下に手術を開始したが,癒着により脾動静脈根部の観察が困難であったため,上腹部に小開腹を追加し,腹腔鏡補助下に脾固定術を施行した.固定部位は左背側部とし,固定方法はretroperitoneal pouch法を選択した.術後は造影CTにて脾腫や血流障害を示唆する所見もなく経過良好である.我々が検索しえた範囲では,先天性横隔膜ヘルニア術後の遊走脾に対し腹腔鏡補助下脾固定術を施行した報告は本邦では初であり,文献的考察を加えて報告する.

  • 高橋 遼, 荒 桃子, 近藤 享史, 奥村 一慶, 本多 昌平, 高桑 恵美, 高畑 雅彦, 武冨 紹信
    2022 年 58 巻 1 号 p. 68-72
    発行日: 2022/02/20
    公開日: 2022/02/20
    ジャーナル フリー

    症例は12歳の女児で乳児期より四肢に多発する骨軟骨腫を認め,近医整形外科にて経過観察の方針となっていた.12歳時に誘因なく胸痛および呼吸困難が出現し,前医で胸部CT上右血胸と右第7肋骨に棘状の骨軟骨腫を認めた.保存的加療にて血胸は軽快し,精査加療目的に当科紹介となった.外傷の既往がなかったことより,肋骨骨軟骨腫による血胸と診断し,発症から20日後に胸腔鏡補助下肋骨部分切除術を施行した.第7肋骨部に胸腔へ突出する軟骨腫を認め,同部位による臓側胸膜の線維性癒着を伴っていた.第8肋骨部にも骨突出を認めるものの,臓側胸膜の癒着は認めず,血胸の原因は第7肋骨の病変と判断し,第7肋骨部分切除術を行った.術後経過は良好で術後6日目に退院となった.以降,再出血や呼吸器症状の出現なく経過観察中である.明らかな誘因なく発症した血胸では本症も鑑別に挙げ速やかに診断,加療する必要があると考えられた.

  • 大塩 猛人
    2022 年 58 巻 1 号 p. 73-78
    発行日: 2022/02/20
    公開日: 2022/02/20
    ジャーナル フリー

    新生児期に左下咽頭梨状窩瘻・甲状腺左葉合併切除が施行され,6年後に梨状窩瘻再発を起こした女児が紹介された.前頸部切開による再手術は操作の困難及び合併症の発生が懸念されるため,内視鏡を用いた瘻管の化学的焼灼術を施行した.気管内挿管全身麻酔下,フード付き内視鏡下にて梨状窩瘻の入口を確認した.フードを瘻孔入口に押し当て円筒を作り,瘻管に細いチューブを挿入して瘻管内と入口周囲を20%トリクロール酢酸0.4 mlにて化学的焼灼を施行した.焼灼直後に,内視鏡にて瘻管のほぼ全てが焼灼されていることを確認できた.合併症の発生はなかった.7か月後,内視鏡にて梨状窩瘻の入口の閉鎖を確認した.化学的焼灼術は,梨状窩瘻の再発時においても有用な推奨すべき治療法と思われる.

  • 内田 豪気, 黒部 仁, 杉原 哲郎, 梶 沙友里, 金森 大輔, 大橋 伸介, 芦塚 修一, 大木 隆生
    2022 年 58 巻 1 号 p. 79-84
    発行日: 2022/02/20
    公開日: 2022/02/20
    ジャーナル フリー

    症例:16歳女児.既往歴:特記事項なし.現病歴:数週間前からの右鼠径部の膨隆を認め近医を受診し鼠径ヘルニアの診断で当院紹介受診となった.立位にて右鼠径部の膨隆を認め,体表超音波検査にて大網脱出を認めたため,14歳時に腹腔鏡下経皮的腹膜外ヘルニア閉鎖術(laparoscopic percutaneous extraperitoneal closure 以下LPEC)を施行した.LPEC施行時5 cm大の右卵巣腫大を認めた.術後右鼠径部の疼痛が出現したが,疼痛が生理周期に伴っており右卵巣腫大の影響も考慮し超音波検査にて経過観察し鎮痛薬にて疼痛コントロールを行っていた.次第に痛みは生理周期とは一致しなくなり,術後慢性疼痛による痛みと判断し神経ブロック注射を行うも効果に乏しく,16歳5か月時にMarcy法による鼠経ヘルニア再縫縮と3神経系切離,子宮円靭帯切離を行った.術後疼痛は消失し現在術後約1年の経過で疼痛の再燃なく経過は良好である.LPEC術後の慢性疼痛の報告は検索した範囲内で過去に1例しかなく,当院での経験を報告する.

  • 花木 祥二朗, 片山 修一, 豊岡 晃輔, 髙田 知佳
    2022 年 58 巻 1 号 p. 85-90
    発行日: 2022/02/20
    公開日: 2022/02/20
    ジャーナル フリー

    大動脈胸骨固定術は先天性食道閉鎖症や気管食道瘻に合併した気管軟化症に対して,広く用いられている術式であるが,重症心身障害児(者)の気管気管支軟化症に対しても有効であった症例を報告する.患者は20歳の男性で,生後8か月時に喘息重積発作による低酸素脳症のため重症心身障害児(者)となった.18歳時に気管気管支軟化症によるdying spellを発症した.造影CT検査では気管気管支軟化症の最狭窄部が大動脈弓と椎体による圧迫部位と一致していた.気管カニューレでチューブステントを行ったが,右主気管支は大動脈圧迫により狭窄したままであった.その後も頻回にdying spellを繰り返したため,20歳時に大動脈胸骨固定術を施行した.術後2年現在,呼吸状態は安定し,再発なく良好に経過している.重症心身障害児(者)の気管軟化症に対しては,大動脈圧迫が原因の場合,大動脈胸骨固定術が有効な術式であることが示唆された.

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