2022 年 58 巻 5 号 p. 793-798
乳児期以降に診断される遅発性先天性横隔膜ヘルニア(以下,遅発性CDH)は予後良好であることが多いが,腸管が嵌頓・絞扼した場合には危機的状況を招くこともあるとされる.生後5か月の女児,来院時哺乳不良,嘔吐,粘血便を呈していた.単純レントゲン写真にて左横隔膜が不明瞭であったが,明らかな呼吸器症状は認めなかった.腹部超音波検査で有意な所見なく,腸重積疑診として診断的治療を目的とした注腸造影検査が施行された.左胸腔内に結腸が描出されると同時に急激な促拍呼吸と酸素化不良を来したため,遅発性CDHと判断し緊急手術にて救命し得た.遅発性CDHにより腸管が嵌頓・絞扼した場合,腸重積と類似した臨床症状を呈することがあり,消化器症状のみで注腸造影検査を行うと致死的な病態を誘発する可能性がある.横隔膜に所見がある場合,本疾患の可能性を考慮し他のモダリティの検査を優先させることが必要である.