日本小児外科学会雑誌
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58 巻, 5 号
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おしらせ
症例報告
  • 辻 亮多, 古川 泰三, 坂野 慎哉, 廣畑 吉昭, 高山 勝平, 坂井 宏平, 東 真弓, 青井 重善, 文野 誠久, 田尻 達郎
    2022 年 58 巻 5 号 p. 783-787
    発行日: 2022/08/20
    公開日: 2022/08/20
    ジャーナル フリー

    腸閉塞で発症し,虫垂炎による炎症の波及が原因であった新生児症例を経験した.症例は日齢18の男児で嘔吐と腹部膨満を主訴に前医を受診し,腸閉塞疑いで同日当院へ搬送された.腹部造影CTで回腸での腸閉塞と診断し,同日緊急開腹術を施行した.回腸末端から30 cm口側に索状物による絞扼を認めた.また膿苔に覆われ根部と先端以外が広範囲に穿孔した虫垂を認め,虫垂炎の炎症の波及により索状物が形成されたと考えられた.虫垂は根部で切離した.絞扼部位の回腸は狭窄の程度が強く,切除して端々吻合した.術後経過は良好で術後16日に退院した.新生児虫垂炎は非常に稀である.新生児症例は虫垂炎の典型的症状に乏しく,本症例でも腸閉塞を契機に発見されたがそれ以前に虫垂炎を示唆する症状は全く認められなかったが,病理所見から新生児虫垂炎と診断した.開腹歴のない新生児の腸閉塞の原因として虫垂炎が背景にある可能性を考慮する必要があると思われた.

  • 高松 由布子, 春本 研, 稲葉 真由美
    2022 年 58 巻 5 号 p. 788-792
    発行日: 2022/08/20
    公開日: 2022/08/20
    ジャーナル フリー

    症例は生後2か月女児.生後1か月頃より血便が出現し,外来経過観察していたが,生後2か月時に貧血の進行を認めたため入院加療となった.注腸造影検査で下行結腸に径8 mm大の腫瘤性陰影を認め,出血源と考えられた.必要時迅速に手術へ移行できる体制を整え,全身麻酔下に下部消化管内視鏡検査を施行し,下行結腸の亜有茎性腫瘤に対して内視鏡的粘膜切除術を行うも,穿孔を来したため開腹手術へ移行した.長径2 cmの穿孔に対し穿孔部単純閉鎖および腹腔ドレナージ術を施行した.術後経過良好で再発を認めていない.病理結果はpyogenic granulomaであった.Pyogenic granulomaは口腔粘膜以外の消化管発生は稀であり,小児の報告例は極めて少ない.易出血性のため小児においても消化管出血の原因の一つとして挙げる必要がある.症例に応じて安全かつ確実な治療法を選択することが重要であり,本症例は乳児のため内視鏡操作が難しく,穿孔を来す前に外科的切除へ切り替えるべきであった.

  • 盛島 練人, 佐藤 智行
    2022 年 58 巻 5 号 p. 793-798
    発行日: 2022/08/20
    公開日: 2022/08/20
    ジャーナル フリー

    乳児期以降に診断される遅発性先天性横隔膜ヘルニア(以下,遅発性CDH)は予後良好であることが多いが,腸管が嵌頓・絞扼した場合には危機的状況を招くこともあるとされる.生後5か月の女児,来院時哺乳不良,嘔吐,粘血便を呈していた.単純レントゲン写真にて左横隔膜が不明瞭であったが,明らかな呼吸器症状は認めなかった.腹部超音波検査で有意な所見なく,腸重積疑診として診断的治療を目的とした注腸造影検査が施行された.左胸腔内に結腸が描出されると同時に急激な促拍呼吸と酸素化不良を来したため,遅発性CDHと判断し緊急手術にて救命し得た.遅発性CDHにより腸管が嵌頓・絞扼した場合,腸重積と類似した臨床症状を呈することがあり,消化器症状のみで注腸造影検査を行うと致死的な病態を誘発する可能性がある.横隔膜に所見がある場合,本疾患の可能性を考慮し他のモダリティの検査を優先させることが必要である.

  • 文田 貴志, 中田 光政, 照井 慶太, 小松 秀吾, 大野 幸恵, 三瀬 直子, 笈田 諭, 齋藤 武, 太田 昌幸, 菱木 知郎
    2022 年 58 巻 5 号 p. 799-803
    発行日: 2022/08/20
    公開日: 2022/08/20
    ジャーナル フリー

    症例は日齢11女児.胆汁性嘔吐を主訴に近医入院となった.ミルクアレルギーが疑われアレルギー用ミルクに変更されたが,その後も胆汁性嘔吐が持続したため精査目的に当院に紹介転院となった.小腸造影検査にてトライツ靭帯より約50 cmの空腸に狭窄像を認め,先天性空腸狭窄症の術前診断にて開腹手術を施行した.トライツ靭帯より45 cmの空腸に狭窄を認め,同部位を切除した.切除腸管の内腔には4/5周にわたり腫瘤が存在し,狭窄の原因となっていた.術後4日から経口摂取を開始し,経過良好にて術後25日に退院となった.病理組織学的所見では,楕円形~卵円形の核を持つ紡錘形の細胞が束状に増殖しており,乳幼児筋線維腫症(infantile myofibromatosis, solitary type)の診断に至った.全身検索においては他臓器に腫瘤性病変はなく,小腸孤発型の乳幼児筋線維腫症として後治療は行わなかった.術後6年経過し再発はない.

  • 出口 幸一, 堺 貴彬, 五味 卓, 正畠 和典, 渡邊 美穂, 野村 元成, 神山 雅史, 上野 豪久, 田附 裕子, 奥山 宏臣
    2022 年 58 巻 5 号 p. 804-808
    発行日: 2022/08/20
    公開日: 2022/08/20
    ジャーナル フリー

    1歳3か月,男児,主訴は右陰囊腫大.生後7か月時より右移動性精巣に対して外来経過観察中,右陰囊の腫大を認めた.右陰囊内に表面平滑で弾性硬の腫瘤を触知し,超音波検査で囊胞を有する長径約2 cmの腫瘤性病変を認めた.術前診断として精巣捻転後変化もしくは良性精巣腫瘍が考えられ,手術の方針となった.手術は陰囊アプローチで腫瘤を摘出し,術中迅速病理検査では悪性所見を認めず,精巣を温存した.病理学的所見にて,囊胞は線毛・立方・扁平上皮に覆われ,囊胞壁内に気管支腺様構造や軟骨組織,脳組織を認めたため,成熟奇形腫と診断した.術後半年経過し,患側精巣の萎縮や腫瘍の再発は認めていない.小児精巣疾患の外来経過観察中に陰囊腫大を認めた場合,精巣腫瘍の合併も念頭に置くべきである.

  • ―自験例を含む本邦報告例の検討―
    佐永田 友季子, 小松 秀吾, 照井 慶太, 中田 光政, 秦 佳孝, 笈田 諭, 勝俣 善夫, 小関 元太, 齋藤 武, 菱木 知郎
    2022 年 58 巻 5 号 p. 809-814
    発行日: 2022/08/20
    公開日: 2022/08/20
    ジャーナル フリー

    症例は生後6か月の男児.在胎19週の胎児超音波で左胸部腫瘤像と心臓の右側偏位を指摘され,当院周産期母性科に紹介された.在胎36週6日,2,940 gで出生し,呼吸障害はなく,生後5日で退院となった.生後4か月時に撮像した胸部造影CT検査では,左肺下葉に含気のない腫瘤性病変が認められた.体循環からの異常血管は描出されなかった.肺分画症の暫定診断で,6か月時に手術を施行した.病変は固有の臓側胸膜を有し,気管支の交通はなく,左肺動脈からの流入血管と,左上肺静脈へ還流する血管を有していた.術後診断は肺葉外肺分画症であった.肺動脈より血流供給される肺葉外肺分画症は比較的まれであり,体循環系から血流供給される肺葉外肺分画症とは好発部位と併存疾患の種類が異なる傾向があった.

  • 山田 耕治, 石本 健太
    2022 年 58 巻 5 号 p. 815-819
    発行日: 2022/08/20
    公開日: 2022/08/20
    ジャーナル フリー

    多発十二指腸閉鎖は稀であり,また総胆管Y字開口も稀である.今回,極めて稀な総胆管Y字開口を伴う先天性多発十二指腸閉鎖症の1例を経験した.症例は心奇形合併21-trisomyの男児.胎児エコーで十二指腸閉鎖を疑われ,当院で出生後の胃管排液は胆汁性で,単純X線像でdouble bubble signを呈し,腹部エコーでwhirl signなく,十二指腸閉鎖の診断で1生日に手術を施行.離断型閉鎖と判断し,diamond吻合を行うべく切開したところ,球部盲端にpinholeを認め,ゾンデを挿入すると下行脚切開部口側の粘膜下に到達した.膜様閉鎖合併を疑い切開したところ,胆汁流出とともにゾンデ先端が露出し,胆囊圧迫にて球部pinholeからも胆汁排出を認めたため,総胆管Y字開口を伴う離断型閉鎖の肛側に膜様閉鎖が合併した病態と判断し,膜様物を可及的に切開した上でdiamond吻合を行った.十二指腸閉鎖症は稀ではないが,手術に際しては多発閉鎖や総胆管Y字開口の可能性を念頭に置いておく必要がある.

  • 高成田 祐希, 河原 仁守, 福澤 宏明, 矢下 博輝, 藤枝 悠希, 中谷 太一, 竹内 雄毅, 長谷川 大一郎, 副島 俊典, 畠山 理
    2022 年 58 巻 5 号 p. 820-826
    発行日: 2022/08/20
    公開日: 2022/08/20
    ジャーナル フリー

    本邦では小児がんに陽子線治療を行うにあたって腹腔鏡下卵巣移動術を施行した報告は少ない.当院の経験について報告する.【症例1】1歳,膣原発横紋筋肉腫.化学療法後に腫瘍切除術を施行し,断端陽性のため陽子線治療を選択した.両側卵管を温存し,両側卵巣を照射野外へ移動した.術後2か月で復位し,現在6歳で経過良好である.【症例2】4歳,膣原発横紋筋肉腫.化学療法後,残存病変に対して陽子線治療を選択した.両側卵管を温存し,両側卵巣を照射野外へ移動した.術後1年2か月のFSH,LHは年齢相当だった.現在5歳で経過良好である.【症例3】11歳,左恥骨原発Ewing肉腫.化学療法後,局所治療として陽子線治療を選択した.左側卵管を切離し,両側卵巣を照射野外へ移動した.多発転移性再発のため術後9か月に死亡した.3例とも腹腔鏡下に両側卵巣を移動することができた.術後の卵巣機能の評価は今後の課題である.

  • 横井 暁子, 竹内 雄毅
    2022 年 58 巻 5 号 p. 827-831
    発行日: 2022/08/20
    公開日: 2022/08/20
    ジャーナル フリー

    上腸間膜動脈(SMA)症候群を発症した筋強直性ジストロフィーの女児に,Strong手術に十二指腸空腸ダイアモンド吻合術を付加した手術(本法)を施行し,経胃栄養が可能になった症例を報告する.この症例は,3歳1か月時に噴門形成術及び胃瘻造設術を施行.6歳11か月時にSMA症候群の診断で経胃瘻的空腸チューブ(GJチューブ)を留置した.7歳3か月時に一旦ボタン型胃瘻カテーテルで経胃栄養可能となったが,その6か月後に再燃しGJチューブを再留置した.7歳11か月ごろより,チューブを軸として逆行性腸重積を来たしたが,原疾患を鑑み可能な限り保存的に加療した.8歳3か月時にGJチューブの入れ替え困難となったため,Strong手術を行った.しかし,屈曲が残存したため,生理的な蠕動方向になるように十二指腸空腸ダイアモンド吻合術を付加した.消化管蠕動が著しく障害されている患児に本法は有効と考えられた.

  • 洞口 俊, 越永 従道, 星 玲奈, 花田 学, 細川 崇, 金田 英秀, 上原 秀一郎
    2022 年 58 巻 5 号 p. 832-837
    発行日: 2022/08/20
    公開日: 2022/08/20
    ジャーナル フリー

    症例は日齢0の男児.在胎34週,前医にて児は頭位自然分娩で出生した.入院時血液検査にて母体の梅毒感染が判明し,児の先天性梅毒症の発症が疑われ,精査・加療目的に当院へ転院となった.身体所見として,顔貌は深い皺を伴い,脆弱な皮膚が剥離し,体幹には表皮剥離,肝脾腫を認めた.血液検査にて,梅毒血清反応・特異的抗体が陽性であり,先天性梅毒症の診断でPenicillin Gの投与を開始した.D-Bil(Direct Bilirubin)値とAST(aspartate aminotransferase)・ALT(alanine aminotransferase)・γGTP(γ-glutamyl Transpeptidase)値の異常が持続するため,日齢86に直接胆道造影と肝生検を施行し肝内胆管減少症の診断に至った.日齢98をピークに検査データ値は改善し,日齢116に退院となった.先天性梅毒症と診断された患児に対して,抗生剤加療や肝庇護療法を施行するも黄疸の遷延や肝胆道系酵素値の異常が持続する症例が存在する.この場合,肝内胆管減少症が続発している可能性があるため,他疾患の鑑別のため直接胆道造影と肝生検による診断が必要である.

  • 古金 遼也, 藤野 明浩, 内田 佳子, 狩野 元宏, 野坂 俊介, 金森 豊, 笠原 群生, 梅澤 明弘, 義岡 孝子, 要 匡
    2022 年 58 巻 5 号 p. 838-845
    発行日: 2022/08/20
    公開日: 2022/08/20
    ジャーナル フリー

    症例は13歳男児.突然の上腹部痛と嘔吐を主訴に近医を受診した.血液検査では異常はなかったが,腹痛が強く当院に紹介となった.独歩で来院したが,診察中にショック状態となった.超音波検査にて上腸間膜動脈起始部から広がる後腹膜の広範な血腫を認めた.血圧維持が困難となり,救急外来でバルーンカテーテルによる大動脈遮断を行い,緊急手術に移った.腹部血管は脆弱で剥離操作にて次々と動脈が断裂し止血は困難であった.下半身血流遮断3時間が経過し,腹部臓器への虚血による損傷が非可逆的となり救命困難と判断し閉腹した.術後3時間で死亡した.剖検時に摘出した動脈の組織像で,壁内の弾性線維の著しい断片化を認め,また血液検体のゲノム解析にてCOL3A1遺伝子に新規病的バリアントを認め,血管型Ehlers-Danlos症候群と確定診断された.急性発症で原因不明の後腹膜血腫の場合,稀だが本疾患も鑑別に加えて診療する必要がある.

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