2022 年 58 巻 6 号 p. 919-926
症例は6歳,女児.1週間持続する腹痛に対し撮影された造影CTで膵臓に囊胞性病変が認められたため当院に搬送された.既に仮性膵囊胞を形成した膵損傷と診断し,囊胞の退縮傾向がみられたため保存的治療を選択した.第20病日に左胃動脈の仮性動脈瘤が破裂し,緊急で血管塞栓術を施行した.第31病日に行った内視鏡的逆行性膵管造影で主膵管の断裂が判明し,第78病日に手術を施行した.膵実質は体部で部分断裂し,同部で主膵管が完全断裂していた.断裂部で膵を離断し,膵頭部断端は主膵管を結紮後に縫合し,膵体尾部は胃体部後壁を開窓して胃内に吻合した.術後2年が経過し,膵臓の萎縮はみられず,普通食を摂取している.膵損傷の治療に際しては主膵管損傷の有無を早期に診断することが肝要であり,その疑いが強ければ全身状態が安定している症例に対して,小児においても全身麻酔下に内視鏡的逆行性膵管造影を行うことは有用であると考えられた.