2022 年 58 巻 7 号 p. 1005-1010
重症心身障碍者は時に空気嚥下による腹部膨満を来たし,腸管拡張を伴ったイレウスの原因になる.我々はFarrell*Valveバッグを使用し,胃内減圧にて腸管ガス貯留改善を認めた1例を経験した.症例は24歳の女性,Cornelia de Lange症候群にて4歳時に噴門形成,胃瘻造設術,21歳時に回盲部捻転にて捻転解除術を施行された.外来通院時も呑気による腹部膨満,胃瘻漏れが認められた.今回,嘔気,腹部膨満にて当院救急外来を受診し,回盲部捻転再発を認め捻転解除術が施行された.術後も腸管ガス貯留による腹部膨満,経腸栄養が施行困難な状況が続き,胃内持続減圧が保てるFarrell*Valveバッグを使用した.胃内が減圧され,腸管ガス貯留が減り腹部症状が緩和された.また胃瘻漏れも改善された.本症のような腸管ガス貯留を来たす場合,Farrell*Valveバッグの使用は有効な方法であると示唆された.