2022 年 58 巻 7 号 p. 996-1004
【はじめに】肝間葉性過誤腫(以下本症)は主に3歳までの乳幼児に見られる肝臓の良性腫瘍であるが,未分化胎児性肉腫の発生母地となる可能性が指摘されている.自験2例の臨床所見を中心に,本邦報告81例の臨床的特徴を検討した.【症例】症例1:5歳女児.主訴は腹痛.肝左葉外側区域に15 cmの多房性囊胞性腫瘤を認めた.AFP上昇なし.本症の術前診断で肝左葉外側区域切除を施行した.症例2:15歳女性.主訴は腹痛.肝右葉後区域に径8 cmの囊胞壁に歯牙様の石灰化を伴う多房性囊胞性腫瘤を認めた.AFP,βHCGの上昇なし.肝奇形腫の疑いで,拡大肝後区域切除を施行し,病理組織検査で本症と診断した.【まとめ】自験例はいずれも術後3年以上を経過し再発を認めていないが,本邦報告例81例では再発を3例に認め,うち1例は悪性転化が疑われた.本症の生物学的特性を考慮し,腫瘍の完全切除を行うことが重要と考えられた.