日本小児外科学会雑誌
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原著
当院における小児腎外傷14例の検討
青山 統寛川嶋 寛石丸 哲也住田 亙柿原 知加藤 怜子林 健太郎
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2023 年 59 巻 1 号 p. 37-43

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抄録

【目的】腎外傷の多くは保存的治療で対処可能とされるが保存的治療の内容,外科的介入の選択と方法についての統一した見解はない.腎外傷の治療法について当科で行っている治療方針の妥当性を考察した.

【方法】1990年1月~2018年12月の期間に当科における腎外傷症例を対象とし,診療録から年齢,性別,受傷機転,腎外傷分類,他臓器損傷,腹部外傷スコア,肉眼的血尿の消失期間,治療方法,保存的治療の場合は絶食・安静・抗菌薬投与期間,合併症,予後,フォローアップ期間の後方視的検討を行った.腎外傷の分類方法には日本外傷学会の腎損傷分類2008を用いた.

【結果】腎外傷症例は計14例で損傷の程度はJAST分類I型が3例,II型が4例,III型が6例,不明が1例であった.保存的治療を行った症例は12例,外科的介入を行った症例は循環動態不安定のため腎摘出術を施行した症例及び,保存的治療中にコントロール不良な尿路感染症のため腎修復術,腎周囲ドレナージ術,尿管ステント留置術を施行した症例の2例であった.腎摘出術を行った症例と腎血管損傷により後に無機能腎となった症例,および受診を自己中断した4例を除く8例で腎機能温存をし得た.入院後絶飲食期間は中央値2(0~10)日,床上安静期間は中央値5.5(1~25)日,抗菌薬の静脈内投与期間は中央値10.5(0~26)日であった.合併症として2例に高血圧症,1例に尿路感染症を認めた.

【結論】本検討では保存的治療を行った症例の多くが合併症なく腎を温存し得ており,保存的治療を第一選択とする方針は有用であった.ただし治療開始後も常に外科的介入の必要性を検討することが重要である.

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