日本小児外科学会雑誌
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59 巻, 1 号
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おしらせ
学術集会記録
原著
  • 青山 統寛, 川嶋 寛, 石丸 哲也, 住田 亙, 柿原 知, 加藤 怜子, 林 健太郎
    2023 年 59 巻 1 号 p. 37-43
    発行日: 2023/02/20
    公開日: 2023/02/20
    ジャーナル オープンアクセス

    【目的】腎外傷の多くは保存的治療で対処可能とされるが保存的治療の内容,外科的介入の選択と方法についての統一した見解はない.腎外傷の治療法について当科で行っている治療方針の妥当性を考察した.

    【方法】1990年1月~2018年12月の期間に当科における腎外傷症例を対象とし,診療録から年齢,性別,受傷機転,腎外傷分類,他臓器損傷,腹部外傷スコア,肉眼的血尿の消失期間,治療方法,保存的治療の場合は絶食・安静・抗菌薬投与期間,合併症,予後,フォローアップ期間の後方視的検討を行った.腎外傷の分類方法には日本外傷学会の腎損傷分類2008を用いた.

    【結果】腎外傷症例は計14例で損傷の程度はJAST分類I型が3例,II型が4例,III型が6例,不明が1例であった.保存的治療を行った症例は12例,外科的介入を行った症例は循環動態不安定のため腎摘出術を施行した症例及び,保存的治療中にコントロール不良な尿路感染症のため腎修復術,腎周囲ドレナージ術,尿管ステント留置術を施行した症例の2例であった.腎摘出術を行った症例と腎血管損傷により後に無機能腎となった症例,および受診を自己中断した4例を除く8例で腎機能温存をし得た.入院後絶飲食期間は中央値2(0~10)日,床上安静期間は中央値5.5(1~25)日,抗菌薬の静脈内投与期間は中央値10.5(0~26)日であった.合併症として2例に高血圧症,1例に尿路感染症を認めた.

    【結論】本検討では保存的治療を行った症例の多くが合併症なく腎を温存し得ており,保存的治療を第一選択とする方針は有用であった.ただし治療開始後も常に外科的介入の必要性を検討することが重要である.

症例報告
  • 瀨名波 英子, 久守 孝司, 船橋 功匡, 石橋 脩一, 真子 絢子, 大倉 隆宏, 西 健, 林 彦多, 川畑 康成, 田島 義証
    2023 年 59 巻 1 号 p. 44-50
    発行日: 2023/02/20
    公開日: 2023/02/20
    ジャーナル オープンアクセス

    症例は,2歳・女児.腹痛・嘔吐・食思不振を主訴に前医を受診.肝外胆管の囊状拡張と高アミラーゼ血症を認め,当科転院となった.黄疸はなかった.入院後,先天性胆道拡張症(CBD)と診断したが,受診1か月前からの腹痛・嘔吐・経口摂取不良による著しい栄養状態の低下を認めた.胆道内圧の上昇が原因と考え,症状緩和と全身状態の改善を目的に,経皮経肝的胆道ドレナージ(PTBD)による胆道減圧を行った.PTBD施行後,症状は消失し,経口摂取を開始した.その後,全身状態は改善し,安全に根治手術を施行することができた.最終的に戸谷分類IV-A型CBDと診断した.CBD小児例に対するPTBDは,高度の閉塞性黄疸や重症胆管炎症例で選択される場合が多く,施術・管理も注意を要する手技であるが,自験例のように胆道内圧の上昇が全身状態悪化の原因と考えられる症例は,根治手術を安全に遂行するうえで有用な選択肢と思われた.

  • 坂野 慎哉, 文野 誠久, 加藤 充純, 高山 勝平, 青井 重善, 古川 泰三, 小関 道夫, 吉田 和弘, 田尻 達郎
    2023 年 59 巻 1 号 p. 51-55
    発行日: 2023/02/20
    公開日: 2023/02/20
    ジャーナル オープンアクセス

    肝芽腫破裂は,出血性ショックにより,ときに致命的になり得る.今回,肝芽腫破裂に対して,経カテーテル動脈塞栓術(TAE)を施行し,全身化学療法後に肝切除を施行しえた3例について報告する.症例1は10か月女児,顔色不良を契機に診断され,ヘリコプターにより転院搬送となり,緊急TAEを施行した.CITA療法4コース後に肝右葉切除を行った.症例2は6歳男児,肝腫瘍精査中に突然ショックとなって発症し,TAEを行い,CITA療法6コース後に肝左葉切除を行った.1.5年後に局所再発に対して切除を施行した.症例3は2歳男児,転院搬送中にショック状態となり,緊急TAEにて止血をした.C5VD療法を4コース施行後に肝右葉切除を施行した.肝芽腫破裂においては迅速なTAEへのアクセスとその完遂が救命につながる.自験例より,乳幼児例においてもTAEは十分施行可能であり,治療の第一選択になり得ると考えられた.また,止血後は化学療法を優先し腫瘍の縮小を図った後に腫瘍切除を行うべきである.

  • 斎藤 浩一, 平山 裕, 仲谷 健吾, 合田 陽祐, 飯沼 泰史
    2023 年 59 巻 1 号 p. 56-60
    発行日: 2023/02/20
    公開日: 2023/02/20
    ジャーナル オープンアクセス

    症例は24生日の女児.在胎38週4日,体重3,055 gで出生.頻回の嘔吐にて前医に入院しCTで絞扼性腸閉塞を疑われた.当院に搬送された時点で極めて重篤な全身状態であった.早期手術が不可欠な状況と判断されたが院内事情で手術室が使用できず,NICU内にて緊急捻転解除とサイロ造設を施行した.術後,循環呼吸状態は安定化し,3時間後に手術室にて根治手術(second look operation:以下SLO)を施行した.術中に腸回転異常症を伴わない小腸捻転と診断し,小腸の約130 cmを虚血後腸管として切除した.回盲弁は温存した.術後1年が経過した現在も成長発達面に大きな問題はみられていない.絞扼性腸閉塞における治療の原則は,一刻も早くの絞扼解除である.SLOは,これまで主に絞扼後腸管の温存を図る目的での治療戦略とされてきたが,根治手術が施行可能となるまでのサイロ造設を用いた捻転解除処置の選択も,救急蘇生法の一貫として非常に有用であると再認識された.

  • 坂井 幸子, 生地 笑子, 谷 眞至
    2023 年 59 巻 1 号 p. 61-66
    発行日: 2023/02/20
    公開日: 2023/02/20
    ジャーナル オープンアクセス

    症例は日齢0の男児.妊娠20週に左肺分画症と診断し,妊娠34週のMRIで左横隔膜ヘルニアと診断.在胎38週4日,体重2,641 g,予定帝王切開にて出生し,日齢2に経腹的横隔膜修復術を施行したが術中胸腔内に分画肺は確認できず,日齢35の造影CTで,左横隔膜上に腹腔動脈から栄養され門脈に還流する肺葉外肺分画症(extralobar pulmonary sequestrations: ELS)を認めた.無症状で経過したが,栄養動脈が太く多くの血流が分画肺にとられていることも考慮して切除の方針とし,1歳半時に胸腔鏡補助下左分画肺切除術を施行した.ELSは一般的には無症状例が多いとされる.門脈還流のELSは極めて稀で,詳細な報告は過去4例のみで,特有の症状はないが全例なんらかの感染をきたしていた.ELSは捻転,梗塞や感染リスクも踏まえて摘出が望ましく,胸腔鏡下もしくは胸腔鏡補助下切除術の良い適応である.

  • 富山 英紀, 李 相雄
    2023 年 59 巻 1 号 p. 67-71
    発行日: 2023/02/20
    公開日: 2023/02/20
    ジャーナル オープンアクセス

    先天性梨状窩瘻に対して化学的焼灼術により新生児期に治療することができた症例を経験した.症例は生後0日の男児.出生前より胎児エコー及びMRIにて左頸部囊胞を指摘されており,出生後のCT及び食道造影検査にて梨状窩囊胞と診断した.生後13日に上部内視鏡にて瘻孔の開口部を視認できたことから全身麻酔下に10%硝酸銀溶液による瘻孔焼灼術を施行,併せて囊胞のドレナージを行った.術後経過は良好で術後2日より経口を開始,7日にはドレーンチューブを抜去した.5か月経過した現在再発なく整容性も得られている.先天性梨状窩瘻に対する化学的焼灼術は新生児でも可能であり,効果的であることが示唆された.

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