症例は生後2か月の男児で,胎児期から心奇形と右横隔膜上腫瘤を指摘され,出生後に両大血管右室起始症,肺動脈閉鎖症,動脈管開存症,心房中隔欠損症と診断された.横隔膜上腫瘤は検査所見から悪性腫瘍の可能性は低く,当初は待機的加療の方針であった.しかし生後1か月時の造影CTで,腫瘤は肺分画症病変が疑われた上,右先天性横隔膜ヘルニアも新たに指摘された.本症例は心奇形の治療を進める過程で,肺血流を増やし肺血管床を育てる必要があり,上記のような胸腔内占拠性病変は可及的早期の治療が望ましいと判断された.生後2か月時に胸腔鏡下に右分画肺切除術及び,横隔膜縫縮術を施行した.術中,術後に特記すべき合併症は認めなかった.肺分画症及び遅発性先天性横隔膜ヘルニアに対する手術は,有意な臨床症状がなければ,待機的に施行されることが多いが,本症例のように重症心奇形を伴う場合は,病態に応じた早期手術の検討が重要と考えられた.