胎児期に腹腔内囊胞を指摘される症例は多いが,左上腹部を占拠する病変は稀である.術前鑑別診断に苦慮したが有症状で新生児期に手術を行った先天性脾囊胞の1例を経験したので報告する.症例は女児で,胎児超音波検査で腹腔内囊胞を指摘された.胎児MRI検査や出生後の超音波検査で左上腹部に囊胞を認めたが,発生臓器は同定できなかった.経過中に少量嘔吐が持続したため,日齢8に手術を行い,術中所見で脾囊胞と診断した.切除断端を最小にするように天蓋切除術を行い,脾容積を温存しつつ術中術後の出血などの合併症なく手術を行うことができた.術後の血液検査で血小板数上昇を認めたが,術後6か月時点で正常化し,重篤な感染症や囊胞の再発なく経過している.新生児期に治療介入を要する脾囊胞の症例は少ないが,症候性の腹腔内囊胞に対しては年齢に関わらず早期介入を考慮すべきである.