日本小児外科学会雑誌
Online ISSN : 2187-4247
Print ISSN : 0288-609X
ISSN-L : 0288-609X
症例報告
腎保護目的に吸収性スペーサーを留置し陽子線治療を行った小児悪性後腹膜腫瘍の1例
南 洋輔 滝口 和暁清水 裕史佐々木 唯佐野 秀樹箱﨑 道之山口 久志加藤 貴弘田中 秀明
著者情報
ジャーナル オープンアクセス

2025 年 61 巻 5 号 p. 833-839

詳細
抄録

これまで腹部悪性腫瘍に対する放射線治療において,正常臓器との距離を保つために照射前に腹腔内に吸収性スペーサー留置を行った報告は散見されるが,後腹膜腔に留置した報告はない.今回,左腎保護目的に吸収性スペーサーを留置し,良好な経過を辿った後腹膜肉腫の1小児例を経験したため報告する.症例は5歳男児.左背部の膨隆を主訴に受診し,左腎に近接し脊柱管内進展を伴う巨大な左後腹膜腫瘍を指摘された.生検でBCOR関連肉腫と診断され化学療法で縮小したが,脊柱管内の腫瘍は完全摘出が困難と予想され陽子線治療の適応と判断した.腫瘍切除後に左腎の背側に吸収性スペーサーを留置し,陽子線治療を完遂した.画像上スペーサーは徐々に縮小し,約5か月で消失した.患児は1年10か月の緩解を維持している.吸収性スペーサーは抜去術が不要であり,アプローチが容易ではない後腹膜腔への留置に適していると考えられた.

著者関連情報
© 2025 特定非営利活動法人 日本小児外科学会

この記事はクリエイティブ・コモンズ [表示 - 非営利 - 継承 4.0 国際]ライセンスの下に提供されています。
https://creativecommons.org/licenses/by-nc-sa/4.0/deed.ja
前の記事 次の記事
feedback
Top