2025 年 61 巻 6 号 p. 962-967
症例は7歳男児.歩行中に軽四自動車に轢過され受傷し,ドクターカーで搬送された.米国外傷外科学会肝損傷分類Grade Vの肝損傷と診断し,ダメージコントロール手術を施行した.初回手術では肝周囲パッキングおよび経カテーテル的動脈塞栓術を行ったが止血困難であり,局所止血剤追加により止血を得た.2nd look operationでは損傷部に肝壊死と胆汁漏を認めたが,肝切除は行わずドレナージを選択した.さらに内視鏡的経鼻胆道ドレナージを行い,後遺症なく術後第59病日に退院となった.肝臓は鈍的腹部外傷において最も損傷を受けやすい臓器であり,Grade Vは死亡率が高く,緊急手術を要する重症外傷であるが,小児例は稀である.肝周囲パッキング,経カテーテル的動脈塞栓術,局所止血剤の併用の有効性,および術後胆汁瘻に対する保存療法の有効性が示唆された.