2025 年 61 巻 7 号 p. 1014-1017
症例は8歳女児.左後部座席に乗車中,車が電柱に衝突し,ドクターヘリにて救急搬送された.シートベルトは肩ベルトを外し,骨盤のラップベルトのみ装着していた.下腹部にシートベルト痕があり,腹膜刺激症状を認めた.CTにてfree airがあり,消化管穿孔の診断で緊急手術を行った.腹腔鏡下に検索すると盲腸周辺に損傷があり,右下腹部で開腹すると,回盲弁対側の盲腸が縦に裂けていた.一期的な縫合閉鎖と付加的虫垂切除を行い,ドレーンを留置した.術後一過性にイレウスとなったが,徐々に腸蠕動は改善し,術後4日目にドレーンを抜去,5日目に食事摂取を再開し,9日目に退院となった.自動車乗車中の交通外傷の診療では,シートベルトによる腹腔内臓器損傷の発生機序や特徴を理解し,腹部臓器損傷の可能性を考慮する必要がある.また,小児における不適切なシートベルト使用による臓器損傷のリスクは,広く社会に周知されるべきである.