2022 年 2 巻 Supplement 号 p. S10
膝前十字靱帯(ACL)を損傷したアスリートの約90%は受傷前と同じ競技レベルでのスポーツ復帰を期待して靭帯の再建術を受ける。しかし、ACL再建術後における受傷前と同じ競技レベルでのスポーツ復帰率は約60%であり、アスリートの期待と実際のスポーツ復帰率との間にはギャップがある。スポーツ復帰率を高めるために、スポーツ復帰阻害因子を明らかにする研究や、それらの因子を実臨床の中で正確に評価・分析し、是正することがスポーツ理学療法の専門家に求められている。
我々のグループでは、ACL再建術後のスポーツ復帰阻害因子を明らかにするための臨床研究を遂行してきた。その中でまず、ACL再建術後にスポーツに復帰していても、自覚的な競技パフォーマンスが受傷前と比べて十分に戻っていない者がいることを明らかにした(Ohji, et al. Orthop J Sports Med. 2020)。この結果をもとに、受傷前と同じ競技レベルのスポーツに復帰しているか否かの評価に、自覚的な競技パフォーマンスを加えた新たなスポーツ復帰の評価尺度を作成し、スポーツ復帰阻害因子となる身体機能や心理状況を明らかにしてきた(Ohji, et al. BMC Sports Sci Med Rehabil. 2021; Ohji, et al. Asia Pac J Sports Med Arthrosc Rehabil Technol. 2021; Ohji, et al. J Exp Orthop. 2021)。
本シンポジウムではまず、我々がこれまでの臨床研究で得た知見を概説する。そして、その知見もとに、スポーツ復帰率を高めるための臨床応用や現状の課題、今後の展開についての議論を深めたい。