スポーツ理学療法学
Online ISSN : 2758-4356
2 巻, Supplement 号
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大会長講演「前十字靱帯損傷・再建術後のスポーツ理学療法」
  • 相澤 純也
    2022 年2 巻Supplement 号 p. S1
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/09/30
    ジャーナル オープンアクセス

    前十字靱帯損傷は様々なスポーツ活動で発生し続けており、再建術後には受傷前レベルのパフォーマンスに到達できない方や、不幸にも再び受傷してしまう方がいる。これらは、スポーツを愛する方や、資源が限られた社会全体において大きな問題である。スポーツ復帰支援に関わる我々理学療法士は、これらを改めて主要課題の一つとして認識し、臨床・実践、研究、教育に真正面から向き合うことが求められる。

    本講演では、我々の研究チームによる臨床データを含めて、主に再建術後のスポーツ復帰に向けたリハビリテーション、パフォーマンス向上、再受傷予防に関する最近の情報を整理する。前十字靱帯損傷・再建術後のスポーツ理学療法における課題を参加者の皆様と共有し、今後の研究発展、標準化につなげたい。

シンポジウム 1「Injury Prevention」
  • 大見 頼一
    2022 年2 巻Supplement 号 p. S2
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/09/30
    ジャーナル オープンアクセス

    膝関節外傷は多くのスポーツ選手を悩ませる外傷であるが、最も重篤な外傷はACL損傷である。我々は2007年より女性バスケットボール選手を対象にHip-focused Injury Prevention program(HIPプログラム)を作成し、前向き介入研究を実施した。その結果、介入前と比較して介入後に非接触性ACL損傷発生率は有意に減少した(Omi etal.AJSM 2018)。また、新入生を対象にこのプログラムを9ヵ月間実施させて、実施前後で片脚着地動作の三次元動作解析を行い、トレーニング効果を検証した。その結果、実施後には衝撃を緩衝できる着地動作に変化することがわかった(大見他 臨床スポ2012)。

    初発のACL損傷だけでなく、臨床において問題となるのがACL再建術(ACLR)後の再損傷である。再損傷には再建したグラフトを再び損傷する再断裂(術後1〜2年以内に多い)と対側損傷(術後2〜3年以降に多い)がある。そこで、HIPプログラムをACLR後のリハプロトコルに導入すれば、再断裂を予防できるのではないかと考え、HIPプログラムを適宜ACLRリハプロトコルに導入し、患者教育を含めた再断裂リハプロトコルを作成し、介入研究を実施した。対象は初回ACLRを受けた者で、従来のプロトコルを実施してスポーツ復帰した者136名(C群)と再断裂予防リハを実施してスポーツ復帰した者153名(再断裂予防リハ群)であった。その結果、C群の再断裂者は10名、再断裂予防リハ群の再断裂者は5名であり、ハザード比は0.39(95%CI:0.14〜1.16 ,P=0.09)であった(Kawashima et al.OJSM 2020)。再断裂予防リハは有益であると考えられる一方で、導入後に再断裂した5名を長期的に調査すると、3名はさらに損傷または対側損傷を起こしていた。つまり、再断裂予防リハの導入によって、ACLR後に 60%程度再断裂を予防できることがわかり、一方でこのプログラムを実施しても複数回のACL損傷を起こす者がいることがわかった。

    次に再断裂予防リハ実施者の経時的な変化を調査する必要があると考え、片脚着地動作の縦断的調査を行った。術後5ヵ月、スポーツ復帰時に片脚着地動作評価を実施したところ、垂直方向最大床反力は、経時的に有意に減少し、かつ患側と健側に有意差はなかった。よって、縦断的調査においても再断裂予防リハは有益であると考えられた。

    若年スポーツ選手に多いACL損傷、再損傷に対して15年間取り組んできて重要だと感じることは、患者教育である。教育をより効果的にするには理学療法士自身のコミュニケーション技術と少しでも怪我を減らしたいという熱意だと思う。本シンポジウムでは、我々がこれまで取り組んできたACL損傷予防についてそのエビデンスと実際についてお伝えしたい。

  • 小林 匠, 沼澤 俊
    2022 年2 巻Supplement 号 p. S3
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/09/30
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    足関節はスポーツ外傷・障害の発生頻度が非常に高い部位である。なかでも足関節靱帯損傷は発生率・再発率ともに非常に高く、将来的に変形性足関節症などの二次的な障害の原因となることも明らかとなっており、発生・再発予防に向けた危険因子の解明と効率的な予防介入の考案はスポーツ理学療法分野において大きな課題の一つである。

    現在、足関節外側靱帯損傷やアキレス腱断裂などの足関節外傷、アキレス腱炎や足底腱膜炎といった足関節障害の予防に関する科学的知見は限定的である。その原因としては、①リスクファクター解明を目的とした前向き研究、②理学療法を含む保存療法の治療効果を検証した臨床研究、の不足が挙げられる。これらの研究の実施にはさまざまな障壁はあるものの、効率的な予防介入を開発するためには、研究機関・医療機関・スポーツ現場などスポーツ理学療法に関わる多くの人々の協力が必要である。

    演者は、これまで主に足関節外側靱帯損傷の再発予防に焦点を当てた研究を実施してきた。足関節外側靱帯損傷後には、さまざまな構造的・機能的問題が生じるため、再発予防を考える際にもさまざまな側面から対象となるアスリートを評価する必要がある。現在、我々は足関節捻挫既往者や学生アスリートを対象に、足関節の不安定性と足関節底屈筋力に焦点を当てた取り組みを進めている。

    本シンポジウムでは、足関節外傷・障害予防に関する科学的知見を整理するとともに、我々が現在行っている取り組みを紹介させていただき、スポーツ理学療法における足関節外傷・障害予防の課題を共有する場としたい。

  • 松浦 由生子
    2022 年2 巻Supplement 号 p. S4
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/09/30
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    競泳で最も多い運動器障害はSwimmer’s Shoulderと称される肩関節障害であるが、本邦においては過去には腰部障害の発生が最も多く、その予防対策が求められたため、日本水泳連盟医事委員会では国立スポーツ科学センターの協力のもと腰部障害予防プロジェクトを導入した。プロジェクトでは、競泳日本代表選手や候補選手を対象に、整形外科医が腰椎椎間板の変性程度の評価を行い、理学療法士が体幹深部筋トレーニングの介入や、遠征毎に障害予防に関する教育や啓発活動を行った。その結果、プロジェクト前と比較し、介入後には腰部障害の発生率が減少し、一定の効果が得られていた。このプロジェクトで導入したエクササイズは体幹を安定させ、腰部障害予防に貢献する腹横筋や多裂筋を中心とした体幹深部筋の強化に焦点を当てていた。これらのエクササイズは練習前やレース前に実施されることが多く、障害予防だけでなく、パフォーマンスに及ぼす可能性がある。エクササイズがパフォーマンスに及ぼす影響を検討するために、泳動作の解析を行い、介入前後で腰椎アライメントと泳速度を比較した結果、腰椎前弯角が減少し、泳速度が向上した。以上から障害予防のみならずパフォーマンス向上のためにも予防エクササイズを導入することは重要であると考えられる。

    その一方で、競泳日本代表選手を対象に障害調査を実施した結果、近年肩関節障害の発生率が増加傾向にあった。Swimmer’s Shoulderと称される競泳競技における肩関節障害のリスクファクターの検討は、陸上での身体特性の抽出を行った評価が多く、泳動作時の動作解析や筋活動解析の検証は少ない。また競泳は体幹を軸とし、四肢を動かすことで推進力を生み出すため、全身の協調性が重要になるが、リスクファクターの検討においては肩関節周囲のみに焦点が当てられ、体幹部や下肢との協調性は不明であった。この協調性に関しては、筋シナジー解析を用いて明らかにすることができる。筋シナジーは筋電図データから、複数の筋がどの程度の割合で貢献しているかを示す「シナジー」と、このシナジーがどのタイミングで発現するかを示す「時間パターン」を示すことができる。筋シナジー解析は、近年では基礎神経科学や臨床分野はもちろん、スポーツ動作時やスポーツ競技選手特有の筋シナジーに関する研究などに応用され始めている。我々はこの筋シナジー解析を用いてSwimmer’s Shoulderの有無で泳動作時の筋シナジーが変化するかを検討した。その結果、クロールや背泳ぎなどの体幹の回旋を伴う泳法においては、特に体幹部と上肢の協調性の保持が重要であることが明らかになり、肩関節障害のリハビリテーションにおいては、肩関節周囲のみならず、体幹部との協調性エクササイズも重要であることが示唆された。本シンポジウムでは、実験研究から得られた結果と、その結果をもとに立案した予防エクササイズについて紹介する。

  • 中村 絵美
    2022 年2 巻Supplement 号 p. S5
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/09/30
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    オーバーヘッドスポーツをおこなうアスリートでは繰り返しの投球動作に起因した投球側上肢の痛みが生じやすい。中でも肩関節痛は競技パフォーマンスの著しい低下や競技からの長期離脱にも繋がる場合も少なくない。そのため、アスリートが不安なくプレーを継続できるよう、障害発生につながるリスクを適切に評価し、予防につなげる取り組みが必要といえる。これまでに、臨床的に修正可能な障害発生リスクとして、肩関節可動域制限や肩甲骨周囲筋機能不全、脊柱や胸郭の可動性低下、不良な投球フォームなどが報告されている。しかし、他のスポーツ障害・外傷(前十字靭帯損傷など)に比べ、オーバーヘッドアスリートの肩障害の発生リスクに関する確立されたエビデンスは少なく、大規模な介入による障害予防効果を示した報告は少ないのが現状である。本講演では、最新のシステマティックレビューの内容を参考にするとともに、我々が過去に実施した前向き研究の結果から、今後のオーバーヘッドアスリートの肩障害予防に関する課題と取り組みについて検討をおこなう。

    また、近年問題視されている投球過多に対する球数制限やイニング制限など投球動作の量的な部分への介入による障害発生との関連についても最新の知見を踏まえて考察していきたい。

シンポジウム 2「Acute Intervention」
  • 高橋 佐江子
    2022 年2 巻Supplement 号 p. S6
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/09/30
    ジャーナル オープンアクセス

    急性期症状に対する物理療法を使った対応について説明する。

    基本的な情報として超音波や寒冷療法、治癒促進を促す物理療法刺激を中心にエネルギーの種類や特性、禁忌を整理し、ここ近年の研究成果を基にした大規模国際大会や国立スポーツ科学センターにおける活用例、今後の展望についてお伝えする。

  • 豊岡 毅
    2022 年2 巻Supplement 号 p. S7
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/09/30
    ジャーナル オープンアクセス

    ▷はじめに

    足関節外側靭帯損傷の急性期治療では、疼痛緩和と組織修復がメインとなる。急性期の治療としては従来RICE処置が提唱されていたが、近年その主流は PEACE & LOVEに変化した。つまり従来のRICE処置からアイシングや安静がなくなり、代わりに適度な負荷と保護が推奨されるようになった。この意味するところは、急性期といえど不動ではなく、動かせるところは動かして、守るべき組織を守るというターゲット戦略と捉えられる。このことを足関節外側靱帯損傷に当てはめて考えてみると、内反を制御しつつ可能な限り早期荷重が推奨されることになる。しかしながら、実際の整形外科外来では、痛くて足をつけない患者様にはギプスシーネと松葉杖を用いて免荷治療を処方しているケースが多い。もちろん、部分荷重ができるようになったら、機能的装具療法も選択肢の一つとなる。果たして、疼痛自制内での早期荷重をすべきか、一定期間の免荷が必要なのか、当日は筆者の過去の発表を踏まえて考察を展開したい。

    ▷歩行時痛の原因は?

    先行研究によると、足関節外側靱帯損傷は後遺症の多い疾患と報告されており、受傷後4週の時点で歩行時痛を有していたケースは7ヶ月後も機能が悪いと報告されている。そのため、受傷後4週までに歩行時痛を改善することが急性期治療の課題と考える。歩行時痛の原因をフェーズ毎に分析してみると、大きく分けて2つの要因が予想される。一つには立脚相初期〜中期における、足部への荷重動作が疼痛を誘発しているケースと、もう一つは立脚相後期における足関節背屈動作が疼痛を誘発しているケースが予想される。前者はheel strikeからMid stanceにかけて、足関節は底背屈中間位から一度軽度底屈し、その後中間位にもどる動作となる。損傷した足関節外側靭帯にとってこの動作は疼痛を生じにくい関節運動であり、この動作での疼痛は外側靭帯以外の組織ダメージが疼痛を誘発している可能性が高い。一方立脚相後期は足関節背屈可動域が必要となり、足関節外側靭帯損傷では多くのケースで背屈動作時痛を呈することを経験するため、背屈動作時の疼痛を緩和することは歩行立脚相後期の疼痛に有効と考えられる。

    ▷背屈動作時痛の原因は?

    足関節外側靭帯損傷の中でも前距腓靭帯は、背屈動作により靭帯にストレスが加わりにくいことから、背屈動作時痛の原因としてこの靭帯が疼痛を誘発しているとは考えにくい。臨床においては、遠位脛腓関節の操作や、距骨の滑り込み誘導、アーチの保護や皮膚の操作など様々な方法が奏功するケースに遭遇する。一概に背屈動作時痛といっても構造的に様々な組織が疼痛を誘発している可能性があることから、当日の発表では疼痛要因を骨、筋、靭帯、滑膜、アライメント、皮膚に分類し、それぞれの組織にターゲットを絞った組織別治療について紹介したい。

  • 真木 伸一
    2022 年2 巻Supplement 号 p. S8
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/09/30
    ジャーナル オープンアクセス

    ワールドラグビーのホームページで「プレーヤーウェルフェア」を開くと、「ワールドラグビーは、プレーヤーウェルフェアにおいて最も先進的なスポーツになるということに全力を尽くしていることを強調する」とある。選手の安全管理に重点を置くという覚悟を宣言しているわけであるが、なかでも、頭部外傷への対応として脳震盪の管理は年々変化しており、脳震盪を受傷した選手の段階的復帰ガイドラインは2022年に変更されたばかりである。日毎に進歩する科学的根拠に基づいてプレーヤーの安全が強調され、特にレベルの高いカテゴリーではそのガイドラインの遵守が求められるため、情報のアップデートは、現場に出るトレーナー・PTの責務となる。

    ラグビーの現場では、日常的に頭部外傷が生じるため、重症度の判断とその後の対応を多く経験する。脳震盪を受傷した選手の回復は、個体差が大きく存在し、遷延する症状も一様ではない。脳の一時的な機能障害によって引き起こされる症状は多様で、脳震盪受傷後に様々な訴えがあることを理解していなければ、症状が残存していることに気づかずに復帰への階段を登らせてしまうことになる。軽微な気分不快や頚部痛は脳震盪と関連ないものと判断されて復帰しているケースも少なくない。頭部外傷に関しては、現場で生じた際の対応について順を追って整理し、その後の管理において注意すべき点を整理したい。

    頚椎に生じる外傷は重篤な後遺障害を残す可能性があり、頭部外傷と同様、発生時の対応は訓練しておく必要がある。ファーストレスポンダーとしてのトレーナーの役割は頭部外傷と変わらないが、頸部外傷受傷後の競技復帰には十分なトレーニングが必要である。頸部外傷に関しては平素演者が取り組んでいるリハビリテーション内容をご紹介したい。

    スポーツの現場に立つセラピスト・トレーナーは、コリジョンスポーツ以外の現場でなくてもすべからく選手の命に関わる重症外傷への対応を熟知している必要があるため、頭頸部外傷が生じた際の対応手順と、その後のリハビリテーション介入に関して参加される方々と情報を共有したい。

  • 宮川 基
    2022 年2 巻Supplement 号 p. S9
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/09/30
    ジャーナル オープンアクセス

    スポーツ外傷急性期におけるアイシングは、鎮痛効果の一方で、損傷組織の回復を遅延させる可能性が示唆されている。アイシングはDR.Mirkinが「RICE(安静、アイシング、圧迫、挙上)」を提唱後、スポーツ現場に広く浸透し実践されている。しかし、DR.Mirkin自身もアイシングによる組織回復の遅延を懸念し、過度に行わないことを推奨している。また、Duboisらは急性期の処置として「PEACE(保護、挙上、抗炎症を控える、圧迫、教育)」を提唱しており、IcingはAvoid anti-inflammatoriesに置き換えられた。炎症は損傷組織の回復に必要な過程であると判明してきており、炎症期に損傷部の清浄化が適切に行われなければ、その後の回復過程は不完全なものとなる。ラットを用いた我々のアイシングの実験では、挫滅損傷による骨格筋損傷直後の施行によって、損傷筋の再生過程が遅延し、成熟化は阻害され、過剰に線維化するとわかった(Takagi et al., 2011)。Takagiらはマクロファージ(以下MΦ)の筋損傷部への遊走・集積がアイシングによって遅延することを見いだし、それが筋再生の遅延と何らかの関係性がある可能性を示した。現在MΦは、損傷筋の再生過程において重要な役割を果たすことが明らかになり、M1型MΦは壊死組織の貪食に、M2型は再生筋線維となる筋衛星細胞の増殖、融合、成熟化に関わるサイトカインを放出することがわかってきている。我々は最近、同様の筋損傷に対するアイシング実験において、MΦ遊走因子であるMCP-1陽性細胞と好中球の損傷部位への集積数が低下することを明らかにした(Miyakawa et al.,2020)。さらに、アイシングによって、損傷部へのM1型のMΦの集積が低下すること(Miyazaki et al., 2022)、TNF-αやIL-10といったMΦの型変換に重要なサイトカインの発現パターンが変化してしまうこと(Kawashima et al.,2021)も明らかにしている。本挫滅損傷モデル動物に対するアイシングが筋再生過程を不完全なものとなることに、損傷部位へのMΦやその遊走因子の集積を遅延させることや、MΦの型変換に重要なサイトカインの発現パターンが変化することが関連していると考えられる。一方、アイシングによる鎮痛効果について、Algaflyらの報告ではアイシングによる神経伝達速度の低下が鎮痛効果に大きく貢献していることが示唆されている。急性期のアイシングは、筋に対しては回復を阻害する場合があるが、疼痛軽減という相反する効果を生じさせている可能性がある。アイシングを現場において適用する際には、その効果に至る作用機序を踏まえて損傷度などの状況や対象者の個別性に合わせて適用する必要があると考えられる。

シンポジウム3「Rehabilitation」
  • 大路 駿介
    2022 年2 巻Supplement 号 p. S10
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/09/30
    ジャーナル オープンアクセス

    膝前十字靱帯(ACL)を損傷したアスリートの約90%は受傷前と同じ競技レベルでのスポーツ復帰を期待して靭帯の再建術を受ける。しかし、ACL再建術後における受傷前と同じ競技レベルでのスポーツ復帰率は約60%であり、アスリートの期待と実際のスポーツ復帰率との間にはギャップがある。スポーツ復帰率を高めるために、スポーツ復帰阻害因子を明らかにする研究や、それらの因子を実臨床の中で正確に評価・分析し、是正することがスポーツ理学療法の専門家に求められている。

    我々のグループでは、ACL再建術後のスポーツ復帰阻害因子を明らかにするための臨床研究を遂行してきた。その中でまず、ACL再建術後にスポーツに復帰していても、自覚的な競技パフォーマンスが受傷前と比べて十分に戻っていない者がいることを明らかにした(Ohji, et al. Orthop J Sports Med. 2020)。この結果をもとに、受傷前と同じ競技レベルのスポーツに復帰しているか否かの評価に、自覚的な競技パフォーマンスを加えた新たなスポーツ復帰の評価尺度を作成し、スポーツ復帰阻害因子となる身体機能や心理状況を明らかにしてきた(Ohji, et al. BMC Sports Sci Med Rehabil. 2021; Ohji, et al. Asia Pac J Sports Med Arthrosc Rehabil Technol. 2021; Ohji, et al. J Exp Orthop. 2021)。

    本シンポジウムではまず、我々がこれまでの臨床研究で得た知見を概説する。そして、その知見もとに、スポーツ復帰率を高めるための臨床応用や現状の課題、今後の展開についての議論を深めたい。

  • 越野 裕太
    2022 年2 巻Supplement 号 p. S11
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/09/30
    ジャーナル オープンアクセス

    足関節靱帯損傷は最も多いスポーツ傷害であり、再発率が高く、運動パフォーマンス不良を導くことから、リハビリテーションによって再発することなくスポーツ活動への完全復帰を導くことが目標となる。この目標を達成するには足関節靱帯損傷の後遺症である慢性足関節不安定症(CAI)に進展しないこと及びCAIを改善させることが重要となる。

    CAIには姿勢バランスや神経筋制御といった機能的因子の障害が関与することが示されている。特に姿勢バランスは多くの介入研究で治療ターゲットとされ、スポーツ復帰を意思決定する際に推奨される評価項目の一つでもある。したがって、演者らはCAI症例の姿勢バランス障害に着目し、どの保存療法が静的および動的姿勢バランス障害を改善させるのかを、システマティックレビューおよびメタアナリシスを行い検討した。2022年3月までの無作為化比較試験を系統的に検索し、48の英語論文を特定した。静的および動的バランスそれぞれに対してメタアナリシスを実施した結果、CAI症例の静的バランスに有効であったのは全身振動刺激トレーニング(標準化平均差(SMD)1.13、95%信頼区間(CI)0.58-1.68)のみであった。動的バランスに有効であったのは全身振動刺激トレーニング(SMD 0.56、95%CI 0.24-0.88)、バランストレーニング(SMD 0.77、95%CI 0.41-1.14)、関節モビライゼーション(SMD 0.75、95%CI 0.35-1.14)、マルチモーダル介入(SMD 0.76、95%CI 0.32-1.20)、経頭蓋直流電気刺激法と筋力強化の併用(SMD 0.81、95%CI0.08-1.53)であった。一方で、静的および動的バランスの両方において、それぞれの介入間での有意差は認めなかった。したがって、これらの有効であった介入はCAI症例の姿勢バランス障害に対する介入選択肢になると考えられた。しかしながら、介入間で有意差を認めなかったことから、より有効な介入の特定には至らなかった。また、エビデンスの確実性を評価した結果、ほとんどが「非常に低」もしくは「低」であったことから、これらの結果の解釈には注意を要する。

    本発表では、上記を含めた演者らのこれまでの研究および足関節靱帯損傷のリハビリテーションに関するエビデンスを整理し、リハビリテーションでの臨床応用の実際に関して議論したい。

  • 奥貫 拓実
    2022 年2 巻Supplement 号 p. S12
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/09/30
    ジャーナル オープンアクセス

    Medial tibial stress syndrome(以下、MTSS)とは、運動時に脛骨後内側縁に疼痛が生じる症状で特徴づけられ、一般的にシンスプリントとして広く認知されている。疼痛部位が類似していることから、脛骨疲労骨折と混同されることが多いが、2000年代から国際論文では、「疲労骨折や虚血性由来の疾患ではない」ことがMTSSの定義に含まれるようになり、疲労骨折や慢性コンパートメント症候群とは区別された障害として研究が行われている。MTSSはスポーツ現場などでは軽視されることが多い症状であるが、下肢オーバーユース障害の中でも治療期間が長く、治癒に至っても再発が繰り返される。長期間にわたる疼痛のために手術に至る例も報告されており、軽視することができない障害である。これらのことから、早期のスポーツ復帰および再発予防を行うためには、MTSSの病態および症状発生メカニズム、適切な治療介入を理解することが重要である。

    MTSS症例を対象とした組織学的研究により、骨の微細損傷や、骨膜と筋膜を含む軟部組織の炎症が認められたことから、これらの組織がMTSSの病態と考えられている。しかし、MRIや超音波画像の所見では異常所見を認めない症例も報告されており、画像評価の際には注意が必要である。また、我々は解剖学的・組織学的研究を通して、MTSSの病態解明に取り組んでおり、その成果の一部を報告する予定である。

    画像上、異常所見を認めない例があることから、理学所見を中心にMTSSを診断する試みが行われ、MTSSの診断方法として有用性が示されている。理学所見の評価に加え、スポーツ動作の評価から脛骨後内側縁の骨や骨膜・筋膜に加わる力学的負荷を推測することで、炎症状態や力学的負荷に応じたリハビリテーションの立案・実践に繋げることができる。骨や骨膜・筋膜に加わる力学的負荷は、解剖学的知見や動作解析から推察されている。MTSSはランニング障害と考えられており、これまで多くのランニングの動作解析が行われているが、ランニングに限らず、様々な動作で症状が誘発される。そのため、本発表ではランニングだけでなくスポーツ動作を評価するための基礎情報として、これまで報告されたMTSSの運動学的特徴を整理する。また、治療介入を行った先行研究の成果を踏まえて、脛骨後内側縁の骨や骨膜・筋膜に加わる力学的負荷について、文献的考察を行う予定である。

  • 服部 寛
    2022 年2 巻Supplement 号 p. S13
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/09/30
    ジャーナル オープンアクセス

    野球競技における投球動作は、肘関節に外反ストレスを生じさせ、過度な投球数による多大な肘関節への負荷は肘関節内側の機能障害を引き起こすことが知られている。

    スポーツ障害に対する画像評価には、一般的にMRIやCT、X線、超音波画像診断装置(以下、US)が用いられる。その中でも、USの利点は、自由な走査が可能であることや現場にて軟部組織の形態学的変化や動的な評価を行えることである。そのため、我々理学療法士は立場上診断することはあってはならないという点に十分注意が必要であるが、機能評価を行う方法として理学療法士でも臨床場面で取り入れやすい評価機器の1つである。文献検索エンジンPubMedにて「baseball」and「elbow」and「ultrasonographyのMeSH terms」にて検索を行うと、285件(2022年10月14日時点)がヒットし、報告数は近年において急増していた。このことから、USのスポーツ分野や運動器分野への応用の普及が近年で急速に進んでいることがわかる。

    野球肘のリハビリテーションにおけるスローイング開始の段階では、疼痛の出現や機能低下に注意し、段階的にスローイング強度を上げていくGraded Return to Sportsの原則にて進めていく必要がある。我々の研究チームでは、およそ7年前から反復的な投球により生じる肘関節内側組織への負荷に着目し、高校野球選手を対象に反復した投球中にUSを用いて肘関節内側組織を評価し、反復投球中における肘関節内側組織の経時的変化の検証を進めてきた。その結果、投球60球にて肘関節外反動揺性の有意な増加や投球100球にて静的安定化機構の尺側側副靭帯の緩み、そして動的安定化機構の前腕屈曲回内筋群の機能低下などが徐々に明らかになってきている。

    本シンポジウムでは、内側型野球肘のUSによる評価に関するこれまでの主要な研究論文について整理して報告する。そして、我々の研究チームのこれまでの研究で得られた知見を紹介する。

シンポジウム4「Performance Enhancement」
  • 永野 康治
    2022 年2 巻Supplement 号 p. S14
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/09/30
    ジャーナル オープンアクセス

    スポーツ現場における理学療法において、パフォーマンス向上とスポーツ外傷・障害予防が両立するか、という問題を抱えることが多い。この両者が両立すれば、理学療法士のスポーツ現場における活動がより促進されると考えられる。本講では我々の研究成果を基にバイオメカニクス的知見からパフォーマンス向上とスポーツ外傷・障害予防の両立について検討したい。

    外傷予防を目指す疾患の1つとして膝前十字靱帯損傷があげられる。予防のための動作指導として着地や切り返しが取り上げられることが多い。切り返し時の動作として、体幹を前傾させ膝関節を屈曲させることが望ましいと考えられる(Nagano2011.J SportsSci)。しかし、女子選手では、そうした動作指示は体幹の動揺が増し、さらにパフォーマンスを低下させる傾向を示してしまう。一方で、切り返しの際の股関節伸展筋の働きが体幹の動揺を抑え、かつ、パフォーマンス向上につながる可能性がある(永野 2011.体力科学)(永野 2017.トレーニング科学)。つまり、女子選手はパフォーマンスを保障するために常にリスクの高い動作を強いられているが、適切なトレーニングにより外傷予防を目指しつつパフォーマンスの維持・向上が達成できると考えられた。

    パフォーマンス向上と外傷・障害予防の両者に関わる知見として、競技中の負荷の定量化があげられる。負荷の定量化により、トレーニングやコンディショニングの指標になると共に、予防にむけて対処すべき動作が明確になるが、競技中の力学的負荷を表す明確な指標は存在していなかった。我々は競技中の加速度変化を計測することにより、力学的負荷の指標として高衝撃動作の頻度やピーク値を明らかにしてきた。バスケットボールを例にとると、男女ともに減速動作が高衝撃動作として最も好発し、男子では身体接触、着地が続いた(Koyama 2020.J Strength Cond Res)が、女子では着地、切り返し、踏切が続いた(Nagano 2021.Sports Med Int Open)。こうして競技中の負荷の高い動作を明らかにすることで、競技に応じたトレーニング内容の実施が可能となり、あわせて、外傷・障害予防の動作指導、予防プログラム実施が可能となる。

    以上のように、パフォーマンス向上と外傷・障害予防は相反するものでは無く、両者の阻害要因を明らかにすることで、その関連性がみえてくる。また、競技中動作のように共通認識の基にパフォーマンス向上と外傷・障害予防の両面から選手にアプローチすることが可能となる。

  • 坂田 淳
    2022 年2 巻Supplement 号 p. S15
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/09/30
    ジャーナル オープンアクセス

    野球のパフォーマンスは、投球パフォーマンスとバッティングパフォーマンスに大別される。投手の投球パフォーマンスの指標として、球速、コントロール、ボールの回転数が挙げられる。投手の能力を示すWalks plus Hits per Inning Pitched(WHIP、投球回あたり与四球・被安打数合計)と球速・回転数の関係をみると、小学生では回転数のみが負の相関がみられ、大学生では球速と回転数がともに負の相関がみられた。投手のパフォーマンスを示す指標として、球速と回転数が重要である。

    9歳から22歳までの532名の投手の球速、回転数について横断的にみてみると、球速は9歳から12歳まで年齢が高くなると5km/時ほど高い値となり、13歳から15歳までは大きくは変わらず、16歳で急激に高い値となり、17歳から22歳までは3-4km/時前後で徐々に高い値となる。回転数も13歳から15歳までは大きく増加しないという点で概ね同様な特徴がある一方、異なる点として19歳以降でほぼプラトーを迎えていた。縦断的なデータではないものの、トレーナビリティを考えるうえで、身体の変化が著しい中学生をどのように乗り切るのか、また投球パフォーマンスの向上が頭打ちとなりうる大学生に対するトレーニングの工夫が必要と考えられる。一方で、当然のことながら全ての選手がこの推移をたどるわけではなく、早熟や晩熟など、個々の選手のパフォーマンスの推移をモニタリングする必要がある。

    投球パフォーマンスの構成要素は多岐に及ぶ。理学療法士が対する身体機能や動作もその一つであり、投球パフォーマンスの必要条件ではないが、十分条件と言える。小学生の球速に関連する機能として後方メディシンボール(MB)投げ、軸足バランス能があり、回転数に関連する機能として後方MB投げと胸郭拡張周径囲が関連した。後方MB投げは、中学・高校・大学でも球速・回転数と関連しており、全身のパワー発揮は投球パフォーマンスに重要な機能と言える。また中学生では球速・回転数共に踏み込み足のバランス能も関係した。下肢機能でも小学生と中学生で軸足・踏み込み足と異なる点が興味深い。

    高校生では球速・回転数ともに胸郭拡張周径囲が関係した。投球動作を解析すると、大きく胸郭を拡張できるほど、投球中の肩関節最大外旋角も増大しており、さらに投球時の肩関節最大外旋角が大きい選手は球速も回転数も高かった。投球動作中のしなりの重要性を示すと考えられる。加えて、リリース時の骨盤・体幹回旋角が高い選手ほど球速が高い結果も得られ、投球方向への十分な回旋がパフォーマンスに重要であると言える。

    大学生では、回転数や球速と直接関係する身体機能はみられなかったが、WHIPとピッチング50球後の胸郭拡張可動性(吸気ー呼気)や投球時の肩最大外旋角が関係し、胸郭のしなりを長く保つことができる選手がより成績を残す可能性がある。

    上記を踏まえ、発表では、年代に応じたパフォーマンス向上のための介入方法の実際も紹介する。

  • 野田 優希
    2022 年2 巻Supplement 号 p. S16
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/09/30
    ジャーナル オープンアクセス

    下肢スポーツ傷害の受傷後、機能改善の経過観察、復帰の判断においてパフォーマンス評価を行うことは非常に重要である。パフォーマンスの一つとして、敏捷性が挙げられるが、その要素に伸張―短縮サイクル(以下、SSC)運動能力がある。SSC能力の評価には、垂直ホッピングやドロップバーティカルジャンプ時のReactive Strengh Index(以下、RSI)がよく用いられており、RSIは各種パフォーマンスと高い相関があることが分かっている。垂直ホッピングやドロップバーティカルジャンプ時のRSI評価は両脚で実施した研究が多い。そのため、足関節外側靭帯損傷後やアキレス腱断裂後など、健側に対する患側の機能回復状況を評価したい場合には使用できないことから、近年、片足ホッピング時のRSIの信頼性についても報告されている。しかしながら、床反力計を有する施設はほとんどなく、またスポーツ現場においても測定できないため臨床で用いることは難しい。よって、RSIを臨床応用するためには、より簡便な測定方法の確立が必要となる。

    近年、慣性センサは比較的安価になってきており、どこへでも持ち運び可能であるため臨床でも用いやすい機器のひとつである。そこで、慣性センサによって得られたデータからRSIを評価できれば、臨床における経過観察やスポーツ復帰の決定、パフォーマンス評価として使用できる可能性がある。本シンポジウムでは、慣性センサを用いてRSI測定を試みた研究の実施過程およびその結果について紹介する。

    対象は、下肢に骨折・脱臼の既往のない健常人7名とした。課題動作は、10回連続片足ホッピングとした。フォースプレート(TF-4060、テック技販)はサンプリング周波数1000Hzとし、垂直床反力データを用いた。慣性センサ(TSND151、ATR promotions社)を用いたRSIの解析は、フォースプレートと慣性センサを同期させ行った。片脚ホッピングのRSIは、10回連続のホッピングを1セットとし、測定は3セット実施した。慣性センサの妥当性を検討するために、慣性センサおよびフォースプレートから得られたRSIの相関係数を算出した。さらにRSIの測定誤差を検討するためにBland-Altman分析を行い、系統誤差の有無を検討した。また、慣性センサの検者内信頼性および測定誤差についても検討した。慣性センサと床反力計で得られたRSIの相関係数はr=0。82(p<0.05)であり、系統誤差として加算誤差および系統誤差が認められた。慣性センサのICC(1,1)は0.97であり、偶然誤差のみであった。

    慣性センサを用いたRSI測定は、外的基準の妥当性も優秀であるため従来のフォースプレートを用いた評価と意義自体(敏捷性やジャンプの質の評価)は同じと考えてよいと思われる。しかし、フォースプレートで測定したRSIとは誤差が存在することから、慣性センサ独自のRSIとして用いるべきであることが分かった。慣性センサはどこへでも持ち運び可能で測定も簡便であること、RSI測定の信頼性も非常に高かったことから、十分に臨床やスポーツ現場で使用可能であると思われる。

  • 田村 暁大
    2022 年2 巻Supplement 号 p. S17
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/09/30
    ジャーナル オープンアクセス

    スポーツにおける着地動作は、対象者の身体機能、障害既往の有無、環境的要因などにより異なる特徴的な衝撃吸収戦略を有することが知られている。特に、衝撃吸収能が乏しい着地動作(いわゆる硬い着地)は、膝関節障害等の発症に大きく影響を及ぼす危険性を有している。

    近年では、スポーツ現場や臨床現場等において、着地時に“柔らかく着地すること”に着目したトレーニングや動作指導が行われることが多い。Paduaら(2009)によって開発されたLanding Error coring System(LESS)では、膝関節前十字靭帯損傷などの発症危険性を判断するための評価指標の一つとして “Total joint displacement in the sagittal lane(Soft, Average, or Stiff)” の評価項目が加えられている。このような臨床的な試みでは、動作を客観的に観察し、「着地時に下肢全体が十分に屈曲しているか」または「柔軟性のある着地が行えているか」という観点で、主に運動学的な評価が用いられている傾向がある。一方で、着地動作の衝撃吸収戦略に関して、Devitaら(1992)は、力学的仕事量(エネルギー吸収量)を運動力学的評価指標としてSoftlanding(柔らかい着地)とStiff landing(硬い着地)における各関節の分節的な特徴を報告している。この報告により、Softlanding(柔らかい着地)を意識することは、膝関節における力学的負荷の軽減に繋がることが明らかとなった。さらに近年では、様々な条件下における着地動作時の下肢関節の文節的な運動力学的評価が実施されており、着地関連動作における衝撃吸収戦略に関する詳細な検討が進められている。

    本講演では、運動力学的な評価としてエネルギー吸収量を主な評価指標とし、異なる特性を有する対象者や複数の関連動作における衝撃吸収戦略を調査した成果を報告するともに、衝撃吸収戦略とスポーツ傷害予防ならびにパフォーマンスとの関連を紹介する。特に、筆者の研究による成果から、着地動作における良好な衝撃吸収戦略として、膝関節における力学的負荷を軽減させるために股関節による貢献を高めることを重要視している。さらに、着地動作は、様々なスポーツにおいて異なる目的・特性を有する動作であることを踏まえ、各種スポーツにおける着地(または接地)動作と衝撃吸収戦略との関連について本講演を通して考えていきたい。

パネルディスカッション1「英語論文への挑戦」
パネルディスカッション2「多様性のあるスポーツ理学療法士」
参加型ミニレクチャー「コンピテンシーに基づいた評価」
  • 廣幡 健二
    2022 年2 巻Supplement 号 p. S27
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/09/30
    ジャーナル オープンアクセス

    Anterior Cruciate Ligament-Return to Sport Injury(ACL-RSI)scaleは、ACL損傷/再建術後患者の“スポーツ復帰に対する心理的準備状況(心構え)”を評価することができるアンケートである。2008年に開発されたACL-RSIscaleは、2022年現在で10種類以上の言語に翻訳され世界的に活用されており、欧米諸国の診療ガイドラインにおいても使用が推奨されている疾患特異的な患者報告型の指標である。

    ACL-RSIscaleのスコアは、ACL再建術後選手の身体機能やスポーツ復帰達成状況と関連することが報告されている。これらの報告のもと近年では、術前や術後早期から選手の心理的側面を丁寧に評価し、必要あれば早期からアプローチすることの重要性に注目が集まっている。最新の研究で、ACL-RSIscaleのスコアと再受傷発生の関連も報告されつつあるが、この点についてはまだ一定の見解が得られていない。

    ACL-RSIscaleスコアの良し悪しとスポーツ復帰や再受傷といったイベントとの関連について議論していくためには、まだまだデータの蓄積が必要である。また、選手から得た情報を診療に活かすためにも、検査者はその評価内容や解釈方法を適切に理解する必要がある。本講では、国際的なスタンダートとなっているACL-RSIscaleに関する国内外の研究動向を整理してそのスコアの特性を解説する。また、参加者の方々にアンケート回答を体験していただきつつ、医療やスポーツの現場で使用する上でのポイントも整理できればと思う。

主題演題発表1「Injury prevention ①」
主題演題発表2「Injury prevention ②」
主題演題発表3「rehabilitation」
主題演題発表4「Performance Enhancement」
一般演題発表 1「女性アスリート支援」
一般演題発表 2「膝関節疾患の理学療法」
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