2022 年 2 巻 Supplement 号 p. S16
下肢スポーツ傷害の受傷後、機能改善の経過観察、復帰の判断においてパフォーマンス評価を行うことは非常に重要である。パフォーマンスの一つとして、敏捷性が挙げられるが、その要素に伸張―短縮サイクル(以下、SSC)運動能力がある。SSC能力の評価には、垂直ホッピングやドロップバーティカルジャンプ時のReactive Strengh Index(以下、RSI)がよく用いられており、RSIは各種パフォーマンスと高い相関があることが分かっている。垂直ホッピングやドロップバーティカルジャンプ時のRSI評価は両脚で実施した研究が多い。そのため、足関節外側靭帯損傷後やアキレス腱断裂後など、健側に対する患側の機能回復状況を評価したい場合には使用できないことから、近年、片足ホッピング時のRSIの信頼性についても報告されている。しかしながら、床反力計を有する施設はほとんどなく、またスポーツ現場においても測定できないため臨床で用いることは難しい。よって、RSIを臨床応用するためには、より簡便な測定方法の確立が必要となる。
近年、慣性センサは比較的安価になってきており、どこへでも持ち運び可能であるため臨床でも用いやすい機器のひとつである。そこで、慣性センサによって得られたデータからRSIを評価できれば、臨床における経過観察やスポーツ復帰の決定、パフォーマンス評価として使用できる可能性がある。本シンポジウムでは、慣性センサを用いてRSI測定を試みた研究の実施過程およびその結果について紹介する。
対象は、下肢に骨折・脱臼の既往のない健常人7名とした。課題動作は、10回連続片足ホッピングとした。フォースプレート(TF-4060、テック技販)はサンプリング周波数1000Hzとし、垂直床反力データを用いた。慣性センサ(TSND151、ATR promotions社)を用いたRSIの解析は、フォースプレートと慣性センサを同期させ行った。片脚ホッピングのRSIは、10回連続のホッピングを1セットとし、測定は3セット実施した。慣性センサの妥当性を検討するために、慣性センサおよびフォースプレートから得られたRSIの相関係数を算出した。さらにRSIの測定誤差を検討するためにBland-Altman分析を行い、系統誤差の有無を検討した。また、慣性センサの検者内信頼性および測定誤差についても検討した。慣性センサと床反力計で得られたRSIの相関係数はr=0。82(p<0.05)であり、系統誤差として加算誤差および系統誤差が認められた。慣性センサのICC(1,1)は0.97であり、偶然誤差のみであった。
慣性センサを用いたRSI測定は、外的基準の妥当性も優秀であるため従来のフォースプレートを用いた評価と意義自体(敏捷性やジャンプの質の評価)は同じと考えてよいと思われる。しかし、フォースプレートで測定したRSIとは誤差が存在することから、慣性センサ独自のRSIとして用いるべきであることが分かった。慣性センサはどこへでも持ち運び可能で測定も簡便であること、RSI測定の信頼性も非常に高かったことから、十分に臨床やスポーツ現場で使用可能であると思われる。