スポーツ理学療法学
Online ISSN : 2758-4356
シンポジウム4「Performance Enhancement」
野球のパフォーマンスの構成要素とその向上
坂田 淳
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ジャーナル オープンアクセス

2022 年 2 巻 Supplement 号 p. S15

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抄録

野球のパフォーマンスは、投球パフォーマンスとバッティングパフォーマンスに大別される。投手の投球パフォーマンスの指標として、球速、コントロール、ボールの回転数が挙げられる。投手の能力を示すWalks plus Hits per Inning Pitched(WHIP、投球回あたり与四球・被安打数合計)と球速・回転数の関係をみると、小学生では回転数のみが負の相関がみられ、大学生では球速と回転数がともに負の相関がみられた。投手のパフォーマンスを示す指標として、球速と回転数が重要である。

9歳から22歳までの532名の投手の球速、回転数について横断的にみてみると、球速は9歳から12歳まで年齢が高くなると5km/時ほど高い値となり、13歳から15歳までは大きくは変わらず、16歳で急激に高い値となり、17歳から22歳までは3-4km/時前後で徐々に高い値となる。回転数も13歳から15歳までは大きく増加しないという点で概ね同様な特徴がある一方、異なる点として19歳以降でほぼプラトーを迎えていた。縦断的なデータではないものの、トレーナビリティを考えるうえで、身体の変化が著しい中学生をどのように乗り切るのか、また投球パフォーマンスの向上が頭打ちとなりうる大学生に対するトレーニングの工夫が必要と考えられる。一方で、当然のことながら全ての選手がこの推移をたどるわけではなく、早熟や晩熟など、個々の選手のパフォーマンスの推移をモニタリングする必要がある。

投球パフォーマンスの構成要素は多岐に及ぶ。理学療法士が対する身体機能や動作もその一つであり、投球パフォーマンスの必要条件ではないが、十分条件と言える。小学生の球速に関連する機能として後方メディシンボール(MB)投げ、軸足バランス能があり、回転数に関連する機能として後方MB投げと胸郭拡張周径囲が関連した。後方MB投げは、中学・高校・大学でも球速・回転数と関連しており、全身のパワー発揮は投球パフォーマンスに重要な機能と言える。また中学生では球速・回転数共に踏み込み足のバランス能も関係した。下肢機能でも小学生と中学生で軸足・踏み込み足と異なる点が興味深い。

高校生では球速・回転数ともに胸郭拡張周径囲が関係した。投球動作を解析すると、大きく胸郭を拡張できるほど、投球中の肩関節最大外旋角も増大しており、さらに投球時の肩関節最大外旋角が大きい選手は球速も回転数も高かった。投球動作中のしなりの重要性を示すと考えられる。加えて、リリース時の骨盤・体幹回旋角が高い選手ほど球速が高い結果も得られ、投球方向への十分な回旋がパフォーマンスに重要であると言える。

大学生では、回転数や球速と直接関係する身体機能はみられなかったが、WHIPとピッチング50球後の胸郭拡張可動性(吸気ー呼気)や投球時の肩最大外旋角が関係し、胸郭のしなりを長く保つことができる選手がより成績を残す可能性がある。

上記を踏まえ、発表では、年代に応じたパフォーマンス向上のための介入方法の実際も紹介する。

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