2022 年 2 巻 Supplement 号 p. S3
足関節はスポーツ外傷・障害の発生頻度が非常に高い部位である。なかでも足関節靱帯損傷は発生率・再発率ともに非常に高く、将来的に変形性足関節症などの二次的な障害の原因となることも明らかとなっており、発生・再発予防に向けた危険因子の解明と効率的な予防介入の考案はスポーツ理学療法分野において大きな課題の一つである。
現在、足関節外側靱帯損傷やアキレス腱断裂などの足関節外傷、アキレス腱炎や足底腱膜炎といった足関節障害の予防に関する科学的知見は限定的である。その原因としては、①リスクファクター解明を目的とした前向き研究、②理学療法を含む保存療法の治療効果を検証した臨床研究、の不足が挙げられる。これらの研究の実施にはさまざまな障壁はあるものの、効率的な予防介入を開発するためには、研究機関・医療機関・スポーツ現場などスポーツ理学療法に関わる多くの人々の協力が必要である。
演者は、これまで主に足関節外側靱帯損傷の再発予防に焦点を当てた研究を実施してきた。足関節外側靱帯損傷後には、さまざまな構造的・機能的問題が生じるため、再発予防を考える際にもさまざまな側面から対象となるアスリートを評価する必要がある。現在、我々は足関節捻挫既往者や学生アスリートを対象に、足関節の不安定性と足関節底屈筋力に焦点を当てた取り組みを進めている。
本シンポジウムでは、足関節外傷・障害予防に関する科学的知見を整理するとともに、我々が現在行っている取り組みを紹介させていただき、スポーツ理学療法における足関節外傷・障害予防の課題を共有する場としたい。