過去3年間に気管支鏡下組織生検(以下生検)が施行された742例を対象とし, 生検後の発熱の頻度, 背景因子およびその対策について検討した。生検後, 38℃以上の熱が4日以上持続した症例が16例(2.2%)に認められた。16例中10例が肺癌で, 内9例に内視鏡的に閉塞・狭窄所見がみられ, その内訳は扁平上皮癌7例, 小細胞癌2例であった。またこれら閉塞・狭窄所見を有する肺癌症例に対し, 擦過細胞診を併用した場合に発熱の頻度が上昇する傾向がみられた。この理由として, (1)癌の気管支粘膜への直接浸潤による局所感染防御能の低下, (2)擦過細胞診による気管支粘膜の損傷は生検によるそれと比較するとより強く, 広範であるという2点が考えられた。さらに内視鏡的に閉塞・狭窄所見を有する肺癌症例に対する生検と擦過細胞診の併用は重篤な感染症を引き起こす危険性があるため, 検査直後からの抗生剤投与が必要と考えられた。