気管支鏡下に気道狭窄を確認し得た6症例の連続性ラ音を解析, その音響学的性状および伝播特性につき検討した。対象は肺扁平上皮癌3例, 転移性肺癌1例, 瘢痕性狭窄1例, 右上葉切除後の狭窄1例の計6例である。気管上頚部および左右の前胸壁で肺音を録音し, サウンドスペクトログラフおよび相関解析の手法を用いて検討した。すべての症例で狭窄部位はII次気管支までの中枢にあり, 1例を除いて気管支ファイバースコープの通過は不可能であった。狭窄音は6例ともmonophonicなラ音であり, 音の強さは気管上頚部で最大, 次いで狭窄側胸部であった。相関解析の結果でも狭窄によるラ音は気管上頚部に非常によく伝播し対側胸部にも弱いながら伝播することが確認された。従って, 聴診上左右差のあるmonophonicな連続性ラ音を認めた場合には気管支狭窄を疑う必要があり, ラ音の消長をモニターする聴診部位としては気管上頚部が最適であると考えられた。