気管支学
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異時性 3 重複肺癌の 1 例と当科における肺多発癌の検討
辰巳 明利北野 司久黄 政龍田中 文啓康 天志
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1991 年 13 巻 3 号 p. 275-281

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抄録

原発性肺癌に対して外科治療を行って経過観察中の4年後に対側の第2・3肺癌を発見した肺3重複癌の1例を報告する。また, 当科における肺多発癌についても臨床的検討を加えた。症例は73歳男性で, 4年前に右S^9原発肺癌(扁平上皮癌)で右下葉切除術を受けているが, 術後経過観察中に嗄声を訴え, 胸部X線写真上に異常影を見たので精査を行った。気管支鏡検査で左B^<1+2>および左B^9に腫瘤を認め, 生検にてそれぞれ小細胞癌, 扁平上皮癌と診断した。これらは同時性重複癌で, 第1肺癌と異時性の3重複肺癌(多発癌)である。化学療法およびYAGレーザー治療を行い, 各々の腫瘍の消失を見た。当科でこれまでに7例の肺多発癌を経験しているが, 異時性は5例であった。また, 4例で多発癌両方の切除が可能であった。第1肺癌治療後の長期にわたる経過観察によって, 第2肺癌の比較的早期発見の可能性が示唆された。また, 重複癌の治療には肺機能温存を考慮した集学的治療が重要であると思われた。

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© 1991 特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
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