気管支学
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症例
著明な血小板血症により血栓塞栓症を併発したPorphyromonas gingivalis肺膿瘍の1例
加藤 諒佐久間 貴士西木 一哲中瀬 啓介野尻 正史四宮 祥平高原 豊及川 卓長内 和弘水野 史朗
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2019 年 41 巻 4 号 p. 375-380

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抄録

背景.近年,歯周病などの口腔内感染症と全身性疾患との関連が注目されている.歯周病の原因菌として特に重要視されているグラム陰性嫌気性細菌Porphyromonas gingivalisが,菌体の有する赤血球凝集能や血小板凝集能によりアテローム性動脈疾患などの心血管疾患の発症に関与しているとの報告がある.症例.62歳男性.咳嗽,血痰を主訴に受診し,左肺上葉に空洞形成を伴う腫瘤影を認め,精査目的に入院となった.経気管支肺生検により大量出血を来し,著明な血小板血症から外腸骨静脈血栓症および肺血栓塞栓症の併発を認めた.気管支洗浄液の嫌気培養よりP. gingivalisが培養され肺膿瘍の診断に至った.結論.著明な血小板血症を来し,多発血栓塞栓症を併発した歯周病菌P. gingivalisによる肺膿瘍の1例を経験した.嫌気性菌性呼吸器感染症の診断において,気管支鏡検査による下気道検体採取および嫌気培養の重要性が示唆された.一方で,経気管支肺生検により誘発されたP. gingivalisの血管内侵入により,菌体の有する血小板凝集能が急性多発血栓塞栓症の併発に関与した可能性が考えられた.

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© 2019 特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
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