気管支学
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症例
開窓術を回避して治癒せしめた右下葉切除後気管支断端瘻+MRSA膿胸の1例
横田 圭右深井 一郎設楽 将之
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2019 年 41 巻 4 号 p. 381-386

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抄録

背景.肺癌術後の気管支断端瘻は重篤な合併症で,膿胸に至れば開窓術が必要になり,保存的治療での治癒は極めて困難である.症例.80歳男性.糖尿病と肺気腫を合併していた.右下葉肺癌に対して,右肺下葉切除+ND2a-1郭清を施行.術後10日目に軽快退院したが,術後16日目に右肺炎を来して入院.喀痰検査よりMRSA肺炎と診断された.術後23日目に気管支断端瘻と診断し開窓術を考慮したが,膿胸腔の局在から肺損傷なしに膿胸腔へ到達することは困難と判断し,同日CTガイド下に胸腔ドレーンを留置した.膿胸腔は徐々に狭小化したが,膿性排液は持続し,気管支断端瘻と膿胸腔が残存した.術後46日目に気管切開術を施行し,ドレーンから注入した洗浄液を気管切開孔から気管支ファイバーを用いて瘻孔直上から吸引回収し,膿胸腔を洗浄した.これにより洗浄開始後1週間で瘻孔は完全閉鎖し,その後膿胸腔も消失し,術後138日目に自宅退院となった.結論.術後気管支断端瘻由来のMRSA膿胸であっても,適正な部位へのドレーン留置と,膿胸腔の容積が限定的で効果的洗浄が可能という条件がそろえば,保存的に治癒を期待できる.

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© 2019 特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
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