気管支学
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症例
気管支鏡検査中の冷生食による止血処置で徐脈性不整脈から心静止に至った1例
西山 裕乃横山 俊彦横山 佑衣子谷本 光希町井 春花佐野 未来木村 令篠塚 怜衣青山 大輔野村 史郎
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2019 年 41 巻 4 号 p. 397-400

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抄録

背景.気管支鏡検査は呼吸器診療に不可欠な手技であるが,併存症のある患者では時に重篤な合併症がみられる.症例.85歳男性.右肺上葉S2末梢の充実性結節に対し,組織診断目的に経気管支肺生検を施行した.検査中,バイタルサインなど特に問題なく経過していたが,止血目的に冷生食(5 ml)を注入した直後から洞性徐脈を来した.硫酸アトロピンを投与するも効果乏しく最終的に心静止に至ったが,胸骨圧迫とアドレナリンの投与にて速やかに心拍は再開した.翌日の冠動脈造影検査では器質的狭窄を認めず,アセチルコリンを用いたspasm誘発テストは陽性を示した.以上の経過と異型狭心症による失神の既往があることから,徐脈性不整脈の原因として,冷生食刺激により誘発された冠動脈攣縮が強く示唆された.結論.冷生食は止血処置として簡便かつ安全と考えられ広く使用されているが,特に冠動脈攣縮のリスクがある患者においては,重篤な不整脈などの合併症が誘起される可能性も留意すべきである.

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© 2019 特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
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