1986 年 8 巻 4 号 p. 515-522
IIPを中心にびまん性間質性肺疾患の1)疾患自体の診断, 2)病態・病期の診断, 3)予後の診断, についてBALとTBLBの有用性とその限界を検討した。T cell subsetの分析を含むBAL液細胞の分析結果と臨床像を組み合わせることにより, サルコイドーシス(Sar)で87%, 過敏性肺炎(HP)でほぼ100%の診断率が得られた。また原因不明のびまん性間質性肺炎(IIP)と膠原病肺(CVD)では好中球が4%以上かつ好酸球が2%以上を示す症例が多く, これが特徴的であり, このcriteriaで診断するとそれぞれ40%, 25%が診断できた。IIPでBAL液中の免疫炎症細胞の増加と肺機能の低下とはよく相関し, リンパ球の%の多い例は発症1年未満にのみみられ予後良好であった。TBLBではIIPの95%にinterstitial pneumonia, fibrosisの所見が得られたが, 疾患の特異性に乏しく, compatibleとしか評価できなかった。TBLBによりIIPでは確診できた症例はなかったが, 臨床像を組み合わせることにより, Sar, HPではそれぞれ50%, 67%が確診できた。以上の成績より, 1)IIPの疾患自体の診断に対してはBAL, TBLBともに決め手となる診断法ではないが, 有力な補助診断法になる, 2)IIPの活動度, 病期, 予後等の判定ではBALはTBLBより有用である, と考えられた。