カワラノギクのメタ個体群動態にとって重要な意味を持つ種子散布については不明な点が多い。そこで,多摩川の永田地区の復元個体群を対象に,種子散布について検討した。種子は散布時期の卓越風の風下に多く散布されたが,風上方向にも散布されていた.風によって散布された種子数は地上からの高さが低いほど多く,ほとんどが高茎草本群落の一般的な群落高よりも低い位置を飛翔していた。また,散布された種子は礫,特にのり石やうき石の多い場所に集中した。実生の出現位置から推定した風散布における最大の散布距離は250mであり,これまで推定されていた30mよりも長く,新たに形成された丸石河原に風による種子散布で実生が生じていた。