抄録
イタヤカエデの更新形態を解明するため,更新稚樹の本数密度,サイズ,齢構成などを調査した。樹冠が閉鎖した林床において,雪圧害ならびに被圧による日照不足等によって主幹の頂端部が欠落・枯死した7~9年生(地際径10~15 mm)個体に根萌芽の発生が確認された。イタヤカエデの根萌芽は,実生更新に不利な時期あるいは場所,環境条件下における個体維持の有力な手段であると考えられる。このように,イタヤカエデは積雪環境下や被陰下において,根萌芽による栄養繁殖と実生繁殖を相互に補完し合いながら生育地の拡大と確実な世代交代を保証する繁殖戦略をとっていることが示唆された。