2007 年 32 巻 4 号 p. 504-512
本研究は,ガリー浸食が著しく発達している未固結礫層の切土法面に対して,植生基材吹付工を用いて播種導入した植物が法面表層土の安定性に及ぼす影響について検討した。本研究では,既存の植生調査(成立本数・成長量・根系形態・根系の引き抜き抵抗力),施工から103 ケ月後の植生調査(成立本数・成長量・植物体表面積)および施工地における粒度分布・透水能・浸食状態の調査結果を基に,施工法面の表層保護・安定に及ぼす植生の影響について検討した。その結果,播種導入した施工地では,ガリー浸食の発生・発達は抑制され,植物群落が法面の表層剥離や浸食に対して極めて有効であることが認められた。また,維持・管理の視点から施工地における人為被害や導入植物の傾倒被害などによる法面の保護・安定性についても考慮すべき点について論じた。