本研究では,絶滅危惧種コギシギシの保護あるいは保全に資する基礎的知見を得ることを目的とした。ここでは,コギシギシ痩果の外部形態ならびに発芽特性について検討を行った。後者においては,高-低温湿層処理ならびに乾燥暗所処理が発芽に及ぼす影響から考察した。その結果,コギシギシの痩果は,3 枚の花被片からなり,それぞれの縁に長い刺を有する点に特徴づけられ,エゾノギシギシの痩果に近い形態にあると考えられた。しかし,それぞれの花被片に粒体が付属する点はエゾノギシギシと異なった。一方,高-低温湿層処理ならびに乾燥暗所処理が発芽に及ぼす影響は認められず,痩果の生理的休眠は浅いものと推察された。