抄録
ニホンジカが生息している島根半島西部の弥山山地において,松くい虫被害跡地の再生方法や今後の森林管理方法を検討するため,16 ヶ所の植生を調査した。高・亜高木は常緑樹29 種,落葉樹42 種が確認された。このうち,出現本数や胸高断面積合計で高い値を示したのはアブラギリ,ヤブツバキ,シロダモ,アカマツであった。低木の総合優占度ではヤブツバキ,シロダモが高・亜高木と同様に高い値を示した。したがって,これらの樹種はシカが生息している状況でも本地域で生育が可能な樹種であると考えられる。一方,アブラギリ,アカマツは低い値であった。このことから,本地域の植生は,シカ防護柵など人為的にシカの排除を行わない限り,ヤブツバキやシロダモを主体とする多様性の低い常緑樹林に移行すると考えられた。