抄録
シカによる農業被害の軽減には,シカの個体数を減らすだけでなく,防護柵設置や農地管理を見直し,地域に応じた対策が必要である。本研究では,兵庫県南あわじ市の神代地区と阿万地区において,景観構造,地域住民の役割,取組みの経緯の比較からシカ防除対策を明らかにすることを目的とした。その結果,神代地区では,林縁から100 m 以上離れた農地が36.0% あり,耕作放棄地は4.3% と少なかった。道路の林縁と農地の間に2 重に2.0 m 以上の金属製の効果的なシカ柵設置が計画的に行われるとともに,専門家・住民が連携し,非農家も活動に取り込み,シカ防除が機能していることが明らかとなった。阿万地域は,林縁から100 m 以上離れた農地は約6.0% のみで森林の際にシカが侵出しやすい水田や畑地が多くあり,耕作放棄地も50.0% 存在した。耕作地の所有者ごとにシカ柵の種類や管理状態が異なっており,計画的な防護柵の設置や組織作りが課題として示された。