抄録
ニホンジカの増加に伴い,のり面緑化施工地の食害が深刻化しつつある。のり面は獣害防止柵の設置が困難であることから,これに代わる獣害対策工が求められている。そこで,金網で植生工を覆うことにより,植生を保護する方法を実用化した。岡山県内において,植生マットを敷設したのり面に金網を20 cm 浮かせた状態で設置した区画と設置していない区画(対照区)を用意し,導入植物の生育状況について経過観察を行った。金網を設置していない区画では,施工後3 ヵ月から食害が観察されはじめ,施工後6 ヵ月でも植被率は10% であった。一方, 金網を設置した区画では,金網を超出した部分で食跡が確認されたが,植被率は施工後30 ヵ月が経過しても100% であった。また,対照区ではシカの踏み荒らしによる植生マットの破損が確認された。以上のことから,金網で植生工を覆うことで,鹿害を軽減できることがたしかめられた。