大学農場の建設工事の際,計画では造成により半分が埋められるはずであった低茎草原に絶滅危惧植物が見つかったため,計画を変更して絶滅危惧植物を他の草原生草本とともに場所ごと保全した。本種においてはポリネーターであるトラマルハナバチ (Bombus diversus diversus Smith.) の訪花 11) や草原の管理が重要であるが,その後残された草原では管理頻度の低下によって侵略的外来種の侵入が起こり,さらには園芸種との交雑の懸念も生じた。開発に伴う保全の際は,対象種を生育場所ごと残すだけでは守れたとはいえず,遺伝的攪乱を含めて周囲の環境の変化に応じた複数の危機を予測し,回避する策を考慮すべきである。